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漲
「漲〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
漲の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「母」より 著者:芥川竜之介
ぎ》れたのは、ほんの数秒の間《あいだ》である。男の顔には見る見る内に、了解の色が
漲《みなぎ》って来た。
「あれか?」
男は感動を蔽《おお》うように、妙に素《そ....
「春」より 著者:芥川竜之介
悔した。けれども辰子はその時にはもう別人《べつじん》かと思うくらい、顔中に喜びを
漲《みなぎ》らせていた。
「そうお? じゃそうして頂戴《ちょうだい》。大村へはわ....
「影」より 著者:芥川竜之介
と子供らしい房子の顔には、なぜか今までにない恐怖の色が、ありありと瞳《ひとみ》に
漲《みなぎ》っていた。
「どう遊ばしました? 奥様。」
「いいえ、何でもないのよ....
「神神の微笑」より 著者:芥川竜之介
目からは、言句《ごんく》に絶した万道《ばんどう》の霞光《かこう》が、洪水のように
漲《みなぎ》り出した。
オルガンティノは叫ぼうとした。が、舌は動かなかった。オ....
「黒衣聖母」より 著者:芥川竜之介
いや、怪しいと云ったのでは物足りない。私にはその顔全体が、ある悪意を帯びた嘲笑を
漲《みなぎ》らしているような気さえしたのである。
「どうです、これは。」
田代....
「湖南の扇」より 著者:芥川竜之介
ねずみいろ》の大掛児《タアクアル》を着た支那人が一人、顔中に愛嬌《あいきょう》を
漲《みなぎ》らせていた。僕はちょっとこの支那人の誰であるかがわからなかった。けれ....
「おぎん」より 著者:芥川竜之介
孫七は長い間《あいだ》黙っていた。しかしその顔は蒼《あお》ざめたり、また血の色を
漲《みなぎ》らせたりした。と同時に汗の玉も、つぶつぶ顔にたまり出した。孫七は今心....
「おしの」より 著者:芥川竜之介
かりでございます。」
観世音菩薩! この言葉はたちまち神父の顔に腹立たしい色を
漲《みなぎ》らせた。神父は何も知らぬ女の顔へ鋭い眼を見据《みす》えると、首を振り....
「寒さ」より 著者:芥川竜之介
試験の答案を調べかけたなり、額の禿《は》げ上《あが》った顔中に当惑そうな薄笑いを
漲《みなぎ》らせていた。
「こりゃ怪《け》しからん。僕の発見は長谷川君を大いに幸....
「素戔嗚尊」より 著者:芥川竜之介
ばせた。するとそこには素戔嗚《すさのお》が、油火の光を全身に浴びて、顔中に怒りを
漲《みなぎ》らせながら、小山のごとく戸口を塞《ふさ》いでいた。若者はその姿を見る....
「秋山図」より 著者:芥川竜之介
》とした色彩の中《うち》に、空霊澹蕩《くうれいたんとう》の古趣が自《おのずか》ら
漲《みなぎ》っているような画なのです。
煙客翁はまるで放心したように、いつまで....
「蜜柑」より 著者:芥川竜之介
穴の中から、煤を溶したようなどす黒い空気が、俄に息苦しい煙になって、濛々と車内へ
漲り出した。元来|咽喉を害していた私は、手巾を顔に当てる暇さえなく、この煙を満面....
「墓」より 著者:秋田滋
めていると、わたくしのこの胸には、それまで想像だもしなかったほどの愉しい気持ちが
漲って来るのでした。彼女の微笑はまた、わたくしの眼のなかに狂的な悦びを注ぎ込み、....
「スリーピー・ホローの伝説」より 著者:アーヴィングワシントン
人を眠りにいざない、ときたま鶉が鳴いたり、啄木鳥の木を叩く音が聞えるが、あたりに
漲ぎる静寂を破る響はそれくらいのものだ。 思いおこしてみると、わたしがまだ少年....
「本所両国」より 著者:芥川竜之介
中学校へ避難したのもやはりこの大水のあった時である。僕は江東橋を越えるにも一面に
漲った泥水の中を泳いで行かなければならなかった…… 「実際その時は大変でしたよ。....