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潤う
「潤う〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
潤うの前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「蘭学事始」より 著者:菊池寛
ござらぬ。遠つ祖どもの苦心があればこそ、二千年この方、幾百億の人々が、その余沢に
潤うてござるのじゃ。良沢の志は、そこでござる。われらは、この後に来《きた》る者の....
「食魔」より 著者:岡本かの子
のを指すのか。それは何ぞ。 夜はしんしんと更けて、いよいよ深みまさり、粘り濃く
潤う闇。無限の食慾をもって降る霰を、下から食い貪り食い貪り飽くことを知らない。ひ....
「出家とその弟子」より 著者:倉田百三
ちがいたします。(涙ぐむ) お兼 ほんとにそうですわ。もうずいぶん長い間あなたが
潤うた、和らかな心でいらしたことはありませんわ。 親鸞 あなたは自分を悪に慣らそ....
「黴」より 著者:徳田秋声
笹村との間隔が、だんだん遠くなってから深山は遠くへ越して行った。そのころは一時
潤うていた深山の生活状態がまた寂しくなっていたので、家主のK―へやるべきものも一....
「爛」より 著者:徳田秋声
て行った。窓からは、夏の夕らしい涼しい風が吹き込んで、萎えたような皮膚がしっとり
潤うようであった。 「そう先の先まで考えたって、どうなるものか。」 お増はじき....
「みみずのたはこと」より 著者:徳冨健次郎
返えして、利別川辺に模範農夫の宮崎君を訪う。矢張草葺だが、さすがに家内何処となく
潤うて、屋根裏には一ぱい玉蜀黍をつり、土間には寒中|蔬菜を囲う窖を設け、農具漁具....
「愛と認識との出発」より 著者:倉田百三
哀は一には君のために覚ゆる悲哀である。春雨に濡るる若草のごとくに甘い、懐かしい、
潤うた悲哀である。君無くば乾からびた味の無い砂地のごとき悲哀になっちまう。 お....
「追慕」より 著者:宮本百合子
その先生の夢を思い掛けず此間の晩に見た。先生は昔のように細面な、敏感な、眼の
潤うた青年で居られた。するとその翌朝故国から来た弟の手紙が、計らずもその先生の断....
「「うどんくい」」より 著者:宮本百合子
いろいろと材料が不足して来ている台所でも、今日の私たちは心持も体もいくらか
潤う食事をこしらえてゆくことに骨おしみしてはいまい。 お米が切符になって、昨今....
「人生における離合について」より 著者:倉田百三
人生に生きていろいろな人々に触れあうとき、ある人々はその感情の質が大変深くてかつ
潤うているのに出会うものである。そして経験によるとこの種の人々はその人生行路にお....
「俊寛」より 著者:倉田百三
言えない欠乏の感じにうたれました。その感じは祈りとか望みとかいうような、すべての
潤うた感じを殺してしまうようないやなものでした。いったいこの島にはえている草や木....
「田舎医師の子」より 著者:相馬泰三
渉をも持ち得なかった。その代りに彼は、妹の頬に浮んでいる美しい赤い血の色や、よく
潤うている口の中や、その奥で見え隠れしている宝玉のような光沢を持った純白な歯やに....
「地上」より 著者:島田清次郎
新鮮な精神、若い精神、世俗の灰汁に染まない精神、もしくは洗い磨かれ、悲しみの涙に
潤うた心――青年や、貧しい境遇に泣く人や、病に苦しんだ人達やの何かを求めてやまな....
「青春の息の痕」より 著者:倉田百三
かに、平らかに書きます。そして涙と訴えとをもって、心から心へと語るような、博い、
潤うたものを書きたいと思います。けれどもできますかしら? 私は受け合うことはでき....
「仏教人生読本」より 著者:岡本かの子
すけれども、収穫それ自身が因にもなります。これが売られる縁によって、多少|生計が
潤うとか、蝗がわいたので都会の子供が蝗取りに来るとか、本年米作の成績表の一部に数....