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潮鳴り
「潮鳴り〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
潮鳴りの前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「旅愁」より 著者:横光利一
きとめたが、もう十一時を過ぎたからというので、皆はそれぞれ部屋の外へ出ていった。
潮鳴りの退いたような静かな廊下に立った久慈と真紀子は、顔も見合さずまた部屋へ戻っ....
「歌声よ、おこれ」より 著者:宮本百合子
の活況にもかかわらず、真の日本文化の高揚力というものが、若々しいよろこびに満ちた
潮鳴りとして、私たちの実感の上に湧きたち、押しよせてこないようなところがある。こ....
「大菩薩峠」より 著者:中里介山
他、水底にかくれた無数の隠れ岩がやらじと遮《さえぎ》るのですから、風浪険悪の夜は
潮鳴りの声が大湊まで来るのは不思議ではありません。 ただ不思議なのはその浪が、....
「大菩薩峠」より 著者:中里介山
い、聞いたのだ。夕凪《ゆうなぎ》と朝凪《あさなぎ》に名を得た静かな伊勢の海、遠く
潮鳴りの音がして、その間を千鳥が鳴いて通った時、浜辺と海がぼうっと明るくなったよ....
「踊る地平線」より 著者:谷譲次
光とともに小雨が濡らしていた。 門を出て、雨中の山坂道を右手へのぼっていくと、
潮鳴りの聞える丘の上へ出た。 旧式な大砲が幾つもいくつも並んで、草むらに砂利が....
「悲しめる心」より 著者:宮本百合子
う。 残されて歎く両親のため同胞のために。 奇蹟も表われなかった。 遠い
潮鳴りの様に聞いた啜りなきの声もそれをきき分けて自分の立って居るのを何処だと知っ....
「古木」より 著者:豊島与志雄
くしてゆきました。二日の夜明けには、火先は一粁ほどのところへまで寄せてきました。
潮鳴りのような音をたててる火と煙との海でした。それがどこまで寄せてくるか、予想は....
「潜航艇「鷹の城」」より 著者:小栗虫太郎
い重たげな音を感ずるのである。 やがて、海霧の騎行に光が失せて、大喇叭のような
潮鳴りが、岬の天地を包み去ろうとするとき、そのところどころの裂目を、鹹辛い疾風が....
「地虫」より 著者:小栗虫太郎
、彼は必死の闘いを挑む決心をしたのである。 やがて、夜が白々と明け初めてきた。
潮鳴りがして、雨を含んだ重たそうな雲が低く垂れこめ、霧はまだ港を鎖ざしている。し....
「放浪記(初出)」より 著者:林芙美子
が飛ぶように、黒点が散った。 ツルツルした海の上を、小舟が無数に四散して行く。
潮鳴りの音を聞いたか! 茫漠と拡った海の叫喚を聞いたか! 煤けたランプの灯を女房....
「釘抜藤吉捕物覚書」より 著者:林不忘
々の身じゃ、はっはっは。」 あとの笑い声は、折柄の濃い戌《いぬ》の刻の暗黒に、
潮鳴りのように消えて行った。と、それに代って底力のある謡曲《うたい》の声の歩は一....
「私本太平記」より 著者:吉川英治
には、耐え難いものがあった。 蜩の声は、壮年期の弔歌に聞え、都を中心とする時の
潮鳴りが、山の静寂とは逆に、心へ底波を打ってくる。 た、た、た、と飛ぶような跫....
「私本太平記」より 著者:吉川英治
まだ千余騎はおりまする」 「たった千騎か」 刻々、敵軍のせまるらしい物音は夜の
潮鳴りにことならない。後伏見(法皇)は、仲時を烈しくお叱りになりながらも、ついに....
「フレップ・トリップ」より 著者:北原白秋
の緑は天幕の内部を明るくする。 私は麦酒を技いて貰ったが、凄まじい強雨と荒海の
潮鳴りとに耳傾けながら、この国境の山上で味う麦酒の味はひえびえとしてそれもいい記....
「ロザリオの鎖」より 著者:永井隆
が動かなくなって立ち止まった。 私はポカンと風呂敷包みをぶらさげて立っていた。
潮鳴りが、ザアッザアッと畑をこえて聞こえている。それはまるで聴診器で聞く心臓音の....