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「潸然〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す

潸然の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
吾輩は猫である」より 著者:夏目漱石
やしないわ」 雪江さんは言《げん》ここに至って感に堪《た》えざるもののごとく、潸然《さんぜん》として一掬《いっきく》の涙《なんだ》を紫の袴《はかま》の上に落し....
振動魔」より 著者:海野十三
た。博士のサナトリューム療院から退院するという日、柿丘は博士の足許にひれふして、潸然たる泪のうちに、しばらくは面をあげることができないほどだった。 柿丘秋郎と....
弟子」より 著者:中島敦
なったことを知った時、老聖人は佇立瞑目《ちょりつめいもく》することしばし、やがて潸然《さんぜん》として涙下った。子路の屍《しかばね》が醢《ししびしお》にされたと....
地は饒なり」より 著者:宮本百合子
《けなげ》にも最後まで忍び、雄々しい生涯を終った自らを、感歎し、賞揚し追慕して、潸然《さんぜん》と涙を流している……。 こんな、不合理なことを、彼女自身は何の....
売色鴨南蛮」より 著者:泉鏡花
何と……手に剃刀を持たせながら、臥床に跪いて、その胸に額を埋めて、ひしと縋って、潸然として泣きながら、微笑みながら、身も世も忘れて愚に返ったように、だらしなく、....
陽炎座」より 著者:泉鏡花
ぬからだ。こりゃ、」 と肩へむずと手を掛けると、ひれ伏して、雪女は溶けるように潸然と泣く。 十四 「陰気だ陰気だ、此奴滅入って気が浮かん、こりゃ....
獄中への手紙」より 著者:宮本百合子
、これを日常のなかにもち来すと、こういう反省となって、私に永遠の花嫁としての涙を潸然《さんぜん》と流させるの。私は果してあなたにふさわしいだけ、いろいろのことし....
妾の半生涯」より 著者:福田英子
》する能わずして、過ぐるに忍びざるをや。ああこれを思い、彼を想うて、転《うた》た潸然《さんぜん》たるのみ。ああいずれの日か儂《のう》が素志を達するを得ん、ただ儂....
葛飾砂子」より 著者:泉鏡花
」 「何にも喰べられやしませんわ。」と膠の無い返事をして、菊枝は何か思出してまた潸然とするのである。 「それも可いよ。はは、何か謂われると気に障って煩いな? 可....
宮本武蔵」より 著者:吉川英治
…もう、そ、そんなこと、どうなるものか」 痩せ尖った肩を大きくふるわせ、そして潸然と泣いて叫んだ。 すると、沢庵は拳骨をかためて、不意に武蔵の顔を横から力ま....
三国志」より 著者:吉川英治
己の身を見まわすと、一室のうちに寝かされて、幕僚の者に看護されていた。――彼は、潸然となみだを流し、苦しげに顔をしかめた。 「痛いか。苦しいだろう」と、友の魏続....
三国志」より 著者:吉川英治
一日も早く母の側に来てたもれ。母に顔を見せて下され―― ここまで読むと徐庶は、潸然と流涕して燭も滅すばかり独り泣いた。 次の日の朝まだき。 徐庶は小鳥の声....
三国志」より 著者:吉川英治
は国家の損失であるし、小さくは、わが片臂を落されたようなここちがする」 彼は、潸然と涙した。 直ちに、この悲しみは、成都へも報じられた。後主劉禅も声を放って....
私本太平記」より 著者:吉川英治
おせがみしたかったに違いあるまい。指のさきも、ひれ伏した鬢の毛も、ふるえていた。潸然と、涙してないだけだった。 「廷尉。退がんなさい」 「……は」 「疾う。退が....
大岡越前」より 著者:吉川英治
あ……」 市十郎は、総毛立ッた襟がみをつかまれながらも、両手を顔へやったまま、潸然と、泣き恥じていた。 「骨肉の兄弟でありながら、相見たとたんに、仇敵のように....