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澄明
「澄明〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
澄明の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「器楽的幻覚」より 著者:梶井基次郎
その終わりに近いあるアーベントのことだった。その日私はいつもにない落ちつきと頭の
澄明を自覚しながら会場へはいった。そして第一部の長いソナタを一小節も聴き落すまい....
「疑問の金塊」より 著者:海野十三
な硝子壜に入って全部で二十五個だった。それは見たところ、黄金の形は一向に無くて、
澄明な液体に過ぎなかったが、しかし本当は九万円の黄金が、この液体の中に溶けこんで....
「金魚撩乱」より 著者:岡本かの子
の姿を始めて見た。また子を産んで、水を更えた後の藻の色のように彼女の美はますます
澄明と絢爛を加えた。復一が研究室に額にして飾っておく神魚華鬘の感じにさえ、彼女は....
「月世界探険記」より 著者:海野十三
。 「あ、あれごらん」と少年は手をあげて前方を指した。その指す方には、空気のない
澄明なる空間をとおして、新宇宙艇の雄姿が見えた。「誰か、艇内からピストルを放った....
「灯明之巻」より 著者:泉鏡花
がある。続いて尼僧顔がないでもあるまい。それに対して、お誓の処女づくって、血の清
澄明晰な風情に、何となく上等の神巫の麗女の面影が立つ。 ――われ知らず、銑吉の....
「録音集」より 著者:豊島与志雄
心理的イメージとが相反するのは、市内電車の、終電車と始発電車である。これは空気の
澄明の度合や他の騒音の度合によるのであろうが、終電車の音は、眠たげで重々しく鈍く....
「レ・ミゼラブル」より 著者:豊島与志雄
は乱されていた。その一徹な澄み切った頭脳は、透明さを失っていた。その水晶のごとき
澄明さのうちには、一片の雲がかけていた。ジャヴェルは自分の本心のうちに義務が二分....
「世界怪談名作集」より 著者:岡本綺堂
りかかりながら、周囲にひろがっている大氷原に、今しも沈もうとしている太陽の投げる
澄明な光りを心から感歎して眺めていると、その夢幻の状態から、わたしは間近にきこえ....
「科学者と夜店商人」より 著者:海野十三
うと思って泥鰌を一匹買って来て、説明書の通りにセルロイドの鵜烏に糸を以て接続し、
澄明なる水をたたえた大きいビーカーの中で実験をして見たところ、泥鰌は底に安定して....
「地上」より 著者:島田清次郎
書いて彼は教室を誰よりも先に出て来た。控室から彼は運動場に出た。北国の冬に珍しい
澄明な青い空だった。運動場一面に張り凍った氷に冬の陽光は輝いている。彼は和歌子の....
「環礁」より 著者:中島敦
早朝、深く水を湛えた或る巌蔭で、私は、世にも鮮やかな景観《ながめ》を見た。水が
澄明で、群魚游泳の状《さま》の手に取る如く見えるのは、南洋の海では別に珍しいこと....
「雪代山女魚」より 著者:佐藤垢石
渓流魚釣りの真髄を味わい得るのは、山女魚の活動が敏捷になった初夏の候、谷の流れが
澄明、底石の姿がはっきりとなる、朝と夕べのまずめであろう。 くさむらから香りの....
「香魚の讃」より 著者:佐藤垢石
月ヶ瀬、嵯峨沢、湯ヶ島と狩野川の沿岸は温泉郷の連続である。天城の山襞から流れ出た
澄明な水に育った大きな鮎が、客膳を飾るに接しては人の心に鮮味の動くを感ずるであろ....
「チチアンの死」より 著者:木下杢太郎
た独りでいるのだとは思いはしないのです。つねに必ずかのアリエルの如く、玲瓏として
澄明なる一物が軽くわたしの背を揺るのです。即ち知る、あなたと凡ての造物との間には....
「仏法僧鳥」より 著者:斎藤茂吉
に行った。鳥は相変らず啼いているが、先程よりももっと近くなって来ている。その声は
澄明で、鉱物音を交え、林間に反響しているところなどは、或は人工的のもののような気....