濁り水[語句情報] » 濁り水

「濁り水〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す

濁り水の前後の文節・文章を表示しています。該当する14件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
ロマネスク」より 著者:太宰治
いた三間ほどの幅の神梛木川が、ひとつき続いた雨のために怒りだしたのである。水源の濁り水は大渦小渦を巻きながらそろそろふくれあがって六本の支流を合せてたちまち太り....
追憶」より 著者:芥川竜之介
出合った。が、幸いどの大水も床の上へ来たことは一度もなかった。僕は母や伯母などが濁り水の中に二尺指しを立てて、一分殖えたの二分殖えたのと騒いでいたのを覚えている....
灯台鬼」より 著者:大阪圭吉
慄陣痛の苦悶であり、奇妙な風船笛のような鳴き声も、すこやかな産声であり、怪しげな濁り水も、胎児の保護を終えた軽やかな羊水であったのか、とわれながらいまさらのよう....
みみずのたはこと」より 著者:徳冨健次郎
、色々の物が揚がって来て、底は清潔になり、水量も多少は増したが、依然たる赤土水の濁り水で、如何に無頓着の彼でもがぶ/\飲む気になれなかった。近隣の水を当座は貰っ....
竜舌蘭」より 著者:寺田寅彦
るようにしてある。大きな鯉、緋鯉がたくさん飼ってあって、このごろの五月雨に増した濁り水に、おとなしく泳いでいると思うとおりおりすさまじい音を立ててはね上がる。池....
艸木虫魚」より 著者:薄田泣菫
特徴で、芭蕉の さみだれを集めて早し最上川 という句を読んで、岸を浸さんばかりの濁り水が、矢のように早く走っているのを想像して、眼が眩いそうになるまでに水の力に....
ベルリン大学」より 著者:寺田寅彦
するのであった。 マルシャル橋や王宮橋から毎日のように眺め見下ろしたスプレーの濁り水に浮ぶ波紋を後年映画「ベルリン」の一場面で見せられたときには、往年の記憶が....
特殊部落の犯罪」より 著者:豊島与志雄
いた。 かき寄せた椿の実を両手にしゃくい上げて、池の中から匐い出した。足の泥を濁り水でじゃぶじゃぶ洗い落すと、ぶるっと身震いがした。 嬉しくも悲しくもないき....
ジャン・クリストフ」より 著者:豊島与志雄
とおりであった。平坦《へいたん》な濡《うるお》いのある土地、淀《よど》んだ運河の濁り水に退屈げな顔を映してる、居眠った古い小さな町。その周囲には、単調な田野、耕....
科学者と夜店商人」より 著者:海野十三
烏の尻に穴をあけ糸を結び、他の一端を泥鰌の首に結びつくるべし。水は底が見えぬよう濁り水とすべし」 科学者には、何のことだか薩張りわからなかったが、数回反読する....
次郎物語」より 著者:下村湖人
意識すると否とにかかわらず、いつも彼の心の底に巣食っている問題であるが、それが今濁り水のように、彼の心におおいかぶさって来たのである。 (宝鏡先生には宝鏡先生の....
小曲」より 著者:橋本五郎
のことで、地面は洗われて反《かえっ》てきれいになっていたが、塀に添った溝にはまだ濁り水が川のように流れていた。 朝日が照っているのである。 田中君は、門から....
宮本武蔵」より 著者:吉川英治
に澄んでいた。 見ると、その橋から見える左がわの岸の草むらから、チョロチョロと濁り水が吐き出されて、それが川へ注ぎ込まれる度ごとに、白いささ濁りが拡がってゆく....
鳴門秘帖」より 著者:吉川英治
温めてくれる女親の肌がない。――吉原裏のおはぐろ溝、黒い泡がブツブツと立つ、あの濁り水のような裏店で、情けも仮借もなく育てられては、こんな姉でも、こうまで強く慕....