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「濃霧〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す

濃霧の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
或る女」より 著者:有島武郎
の注意の焦点となり、話題の提供者となったのは不思議もない。毎日毎日凍りつくような濃霧の間を、東へ東へと心細く走り続ける小さな汽船の中の社会は、あらわには知れない....
失楽園殺人事件」より 著者:小栗虫太郎
た、廃疾者かその家族に限られていたからであった。 所が三月十四日のこと、前夜の濃霧の名残りで、まだ焼色の靄が上空を漂うている正午頃に、その橋を、実に憂欝な顔を....
人造人間殺害事件」より 著者:海野十三
その早暁《そうぎょう》、まだ明けやらぬ上海《シャンハイ》の市街は、豆スープのように黄色く濁った濃霧の中に沈澱《ちんでん》していた。窓という窓の厚ぼったい板戸をしっかり下《おろ....
海底大陸」より 著者:海野十三
ないといってさわいでいる。しかしほんとうに眼が見えなくなったのか、それともひどい濃霧につつまれたのか、それはどっちかわからない」 「濃霧じゃないと思うね」 と....
灯台鬼」より 著者:大阪圭吉
ばまれて激上するために、海面には騒然たる競潮を現わしていようというところ。だから濃霧の夜などはことに事故が多く、船員仲間からは魔の岬と呼ばれてひどく恐れられてい....
綺堂むかし語り」より 著者:岡本綺堂
な山霧の波に向き合って立ちました。 わたしは日露戦役の当時、玄海灘でおそろしい濃霧に逢ったことを思い出しました。海の霧は山よりも深く、甲板の上で一尺さきに立っ....
人外魔境」より 著者:小栗虫太郎
。 私は思い切って、最後の飛行の時ぐっと下降してみました。ところが、いままで、濃霧か沼気かと思っていたのが驚いたことに雲のように群れている微細な昆虫だったので....
浮かぶ飛行島」より 著者:海野十三
た。 雨は重く、風はいよいよ烈しく、空はますます低くたれた。砲煙爆煙は、まるで濃霧のように海面を蔽った。砲声はいよいよ盛んに、空中部隊はエンジンも焼けよと強襲....
霊訓」より 著者:浅野和三郎
ます無智と迷信の雲霧の中に迷い込ましむる資料としか思われない。迷信の曲路、無智の濃霧――これ等はいずれの世にありても、常に求道者を惑わせる。又人間の眼から観れば....
秋の筑波山」より 著者:大町桂月
の奇巌、峯上に突起す。就中女体峯頭が最も高く、且つ眺望最もすぐれたれど、この日は濃霧濛々として眺望少しも開けざりき。男体山には伊弉諾尊を祀り、女体山には伊弉冊尊....
バークレーより」より 著者:沖野岩三郎
こうが雪が降ろうが、私はいつも此の通りに立っている。或時は寒流から押しよせて来る濃霧のために、眼前|咫尺を弁じない事もあるが、今日のように、あの美しいタマルパイ....
バットクラス」より 著者:岡本かの子
鉄柵を噛んでいる。第二の窓からやや遠方を見る。其処の屋上起重機はロンドンの今朝の濃霧を重そうに荷っている。第三の窓をめくった時金具の磨きのぴかぴか光る騎馬が一騎....
穂高岳槍ヶ岳縦走記」より 著者:鵜殿正雄
らねばならぬ、ここが第一の難関、相悪く大降り、おまけに、横尾谷から驀然吹き上ぐる濃霧で、足懸りさえ見定めかね、暫時茫然として、雨霧の鎮まるを俟てども、止みそうも....
層雲峡より大雪山へ」より 著者:大町桂月
みを以てするも、数十万人を立たしめて、なお余あるべし。白雲岳を目ざして行く程に、濃霧襲い来りて、日も暮れむとす。濃霧やや解けたる方角に雪田あるを見たれば、下りて....
南半球五万哩」より 著者:井上円了
に至り、ますます濃厚を加えたるために船をとめ、五分ごとに汽笛を吹く。夕六時に至り濃霧ようやく晴れ、進航に就く。波穏やかなれども、自然に大波動の寄せ来たるを見る。....