»
濘
「濘〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
濘の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「大導寺信輔の半生」より 著者:芥川竜之介
りは穴蔵大工だの駄菓子屋だの古道具屋だのばかりだった。それ等の家々に面した道も泥
濘の絶えたことは一度もなかった。おまけに又その道の突き当りはお竹倉の大溝《おおど....
「仙人」より 著者:芥川竜之介
にか、霙《みぞれ》まじりの雨をふらせて、狭い往来を文字通り、脛《はぎ》を没する泥
濘《でいねい》に満そうとしている、ある寒い日の午後の事であった。李小二《りしょう....
「西湖の屍人」より 著者:海野十三
りから急に傾斜がひどくなって、足が自然に動かなくなる。そのうえに、路がだんだん泥
濘ってきて、一歩力を入れてのぼると、二歩ズルズルと滑りおちるという風だった。それ....
「蠅男」より 著者:海野十三
く、カオルさんの靴にも同等程度の泥がついていたからです。つまり二人は同じ程度の泥
濘を歩いたことになります。それから燕号は、東京駅を午前九時に発車するのですから、....
「金魚撩乱」より 著者:岡本かの子
金魚だ、金魚だ」 失望か、否、それ以上の喜びか、感極まった復一の体は池の畔の泥
濘のなかにへたへたとへたばった。復一がいつまでもそのまま肩で息を吐き、眼を瞑って....
「五色温泉スキー日記」より 著者:板倉勝宣
雪を眺めながら汽車が出た。戸田は宇都宮で降りた。後の三人は上野に七時に着いた。泥
濘にごった返した土を見た時、帰らなければよかったと思った。銀座を歩くと貧民窟のよ....
「七宝の柱」より 著者:泉鏡花
目に掛った。 樹立の森々として、聊かもの凄いほどな坂道――岩膚を踏むようで、泥
濘はしないがつるつると辷る。雨降りの中では草鞋か靴ででもないと上下は難しかろう―....
「第二菎蒻本」より 著者:泉鏡花
ければ可かった、奥も無さそうなのに、声を聞いて出て来ないくらいなら、とがっくり泥
濘へ落ちた気がする。 「唯今お湯へ参ってますがね、……まあ、貴方。」と金壺眼はい....
「薄紅梅」より 著者:泉鏡花
話の中に、田舎から十四で上京した時は、鍛冶町辺の金物屋へ小僧で子守に使われた。泥
濘で、小銅五厘を拾った事がある。小銅五厘|也、交番へ届けると、このお捌きが面白い....
「黒百合」より 著者:泉鏡花
から、この町を通る腕車荷車は不残路地口の際を曳いて通ることがあった。雨が続いて泥
濘になったのを見澄して、滝太が手で掬い、丸太で掘って、地面を窪めておき、木戸に立....
「沼夫人」より 著者:泉鏡花
がったり通る。 路は悪かった。所々の水溜では、夫人の足がちらちら映る。真中は泥
濘が甚いので、裙の濡れるのは我慢しても、路傍の草を行かねばならない。 停車場は....
「霊訓」より 著者:浅野和三郎
る悪霊の犠牲になった人間は、勿論ただ堕落の一路を辿り、一歩一歩、ぬきさしならぬ泥
濘の深みにはまり込んで行く。その間彼のあわれなる妻子は、飢えたる腹をかかへて、言....
「註文帳」より 著者:泉鏡花
たり絶えて、魔が通る前後の寂たる路かな。如月十九日の日がまともにさして、土には泥
濘を踏んだ足跡も留めず、さりながら風は颯々と冷く吹いて、遥に高い処で払をかける。....
「とと屋禅譚」より 著者:岡本かの子
は出されなかった。 感慨がしきりに催して来た国太郎がうつろに眺めている往来の泥
濘に幾十百かの足は往来したが、彼の店には一つも入って来なかった。自分のところの店....
「黒猫十三」より 著者:大倉燁子
て、小脇に抱えているのはなかなか骨が折れる。気が急くので肩に引っ担いで歩いた。泥
濘に靴が吸いついたり、辷べったりしながら、漸ッとの思いでアパートの階段に辿り着き....