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濡らす
「濡らす〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
濡らすの前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「魔術」より 著者:芥川竜之介
すから、窓の外に降る雨脚《あまあし》も、しっきりなく往来する自働車や馬車の屋根を
濡らすせいか、あの、大森《おおもり》の竹藪にしぶくような、ものさびしい音は聞えま....
「葱」より 著者:芥川竜之介
か十七とか云う少女である。しかも芸術的感激に充ち満ちている少女である。着物を雨で
濡らす心配があるか、ライン河の入日の画端書《えはがき》に感嘆の声を洩《も》らす時....
「青春の逆説」より 著者:織田作之助
思ってみたり、赤井の顔を想い泛べてみたり、なかなか寝つかれなかった。文字通り枕を
濡らす想いで夜が明けた。そして木賃宿を出ると、また一日中野良犬のように町を歩きま....
「単独行」より 著者:加藤文太郎
等困難せり、なかにも急流徒歩の折等は流されんとして命からがら岸へ飛びつき、着物等
濡らす、尾根を進みまた下りて河原に出で、流れゆるきところを流されつつ下れば松高山....
「空気男」より 著者:海野十三
体につけて置いた消身電気が濡れた服を伝わって逃げてしまったのにちがいない。身体を
濡らすことはよくないことだと始めて悟ることができた。夜に入って、妻君がベッドの上....
「伯爵の釵」より 著者:泉鏡花
……加うるに、紫玉が被いだ装束は、貴重なる宝物であるから、驚破と言わばさし掛けて
濡らすまいための、鎌倉殿の内意であった。 ――さればこそ、このくらい、注意の役....
「草迷宮」より 著者:泉鏡花
その常夏を束にした、真丸いのが浮いて来るだ。 (銭金はさて措かっせえ、だが、足を
濡らすは、厭な事だ。)と云う間も無え。 突然ざぶりと、少え人は衣服の裾を掴んだ....
「南地心中」より 著者:泉鏡花
は堪えず、目に袖を当てようとした。が、朱鷺色衣に裏白きは、神の前なる薄紅梅、涙に
濡らすは勿体ない。緋縮緬を手に搦む、襦袢は席の乱れとて、強いて堪えた頬の靨に、前....
「縁結び」より 著者:泉鏡花
、南無妙、さしも厳しかりけるこの女房、南無妙。」 といいいい額堂を出ると、雨に
濡らすまいと思ったか、数珠を取って。頂いて懐へ入れたが、身体は平気で、石段、てく....
「黒百合」より 著者:泉鏡花
た。折からの雨はまた篠を束ねて、暗々たる空の、殊に黄昏を降静める。 慶造は眉を
濡らす雫を払って、さし翳した笠を投出すと斉しく、七分三分に裳をぐい。 「してこい....
「世界怪談名作集」より 著者:岡本綺堂
彼女は独りごとを言いながらさめざめと泣くのです。わたしはその涙がわたしの腕を
濡らすのを覚え、彼女がその手でしがみつくのを感じました。そのうちに彼女はとうとう....
「銅銭会事変」より 著者:国枝史郎
山下は景気立っていた。茶屋女が美しいので、近ごろ評判の一|葉茶屋で、弓之助は喉を
濡らすことにした。 女が渋茶を持って来た。ふと見ると弓之助の正面に、一人の老武....
「死剣と生縄」より 著者:江見水蔭
」 小虎が代って手繰ろうとした。 「いや、女に力を出させては気の毒、それに袖を
濡らすと宜しく無い」 竜次郎はそれを遮切って、矢張自分で手繰るので有った。それ....
「五重塔」より 著者:幸田露伴
の頼もしきを解せぬというにはあらざれど、のっそりもまた一気性、他の巾着でわが口|
濡らすようなことは好まず、親方まことにありがとうはござりまするが、御親切は頂戴い....
「ファウスト」より 著者:ゲーテヨハン・ヴォルフガング・フォン
かに立てる海の
晴やかなる祭の場に行かむ。
二重に月照りて奇しき露もて
われ等を
濡らす所に行かむ。
かしこには賑はしき自由なる生活あり。
こゝには忌まはしきなゐ....