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「火桶〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す

火桶の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
羅生門」より 著者:芥川竜之介
くさめ》をして、それから、大儀《たいぎ》そうに立上った。夕冷えのする京都は、もう火桶《ひおけ》が欲しいほどの寒さである。風は門の柱と柱との間を、夕闇と共に遠慮な....
玉藻の前」より 著者:岡本綺堂
うよ」と、父は狭い庭いっぱいの朝日をまぶしそうに仰ぎながらほほえんだ。「夜はもう火桶《ひおけ》が欲しいほどじゃが、昼はさすがに暖かい。孝行なそなたが夜ごとの清水....
二、三羽――十二、三羽」より 著者:泉鏡花
つで、耳が遠かった。――その耳を熟と澄ますようにして、目をうっとりと空を視めて、火桶にちょこんと小さくいて、「雀はどうしたろうの。」引越しをするごとに、祖母のそ....
絵本の春」より 著者:泉鏡花
本箱がずらりと並んだ、手習机を前に、ずしりと一杯に、座蒲団に坐って、蔽のかかった火桶を引寄せ、顔を見て、ふとった頬でニタニタと笑いながら、長閑に煙草を吸ったあと....
雪たたき」より 著者:幸田露伴
立派な堂々たる家、納屋衆の中でも頭株の嚥脂屋の奥の、内庭を前にした美しい小室に、火桶を右にして暖かげに又安泰に坐り込んでいるのは、五十余りの清らな赭ら顔の、福々....
歌行灯」より 著者:泉鏡花
にも苫を伏せ、蓑を乾す、繋船の帆柱がすくすくと垣根に近い。そこに燭台を傍にして、火桶に手を懸け、怪訝な顔して、 「はて、お早いお着きお草臥れ様で、と茶を一ツ持っ....
琵琶伝」より 著者:泉鏡花
の※子の下なりし机の上も片づきて、硯の蓋に塵もおかず、座蒲団を前に敷き、傍なる桐火桶に烏金の火箸を添えて、と見ればなかに炭火も活けつ。 紫たんの角の茶盆の上に....
湯女の魂」より 著者:泉鏡花
たが、女は大人しく床を伸べてしまいました。夜具は申すまでもなく、絹布の上、枕頭の火桶へ湯沸を掛けて、茶盆をそれへ、煙草盆に火を生ける、手当が行届くのでありまする....
伊勢之巻」より 著者:泉鏡花
下着の端、媚かしきまで膝を斜に、三枚襲で着痩せのした、撫肩の右を落して、前なる桐火桶の縁に、引つけた火箸に手をかけ、片手を細りと懐にした姿。衣紋の正しく、顔の気....
鹿狩り」より 著者:国木田独歩
の談話を聞くと随分粗暴であった。 玄関の六畳の間にランプが一つ釣るしてあって、火桶が三つ四つ出してある、その周囲は二人三人ずつ寄っていて笑うやらののしるやら、....
飯田蛇笏」より 著者:芥川竜之介
ていた。 その内に僕も作句をはじめた。すると或時歳時記の中に「死病得て爪美しき火桶かな」と云う蛇笏の句を発見した。この句は蛇笏に対する評価を一変する力を具えて....
歳時記新註」より 著者:寺田寅彦
感じではあるまい。(明治四十一年十月一日『東京朝日新聞』) 八火桶、火鉢 金属や陶器のは火を入れると周囲が熱くて触れなくなるが、木製のだとそ....
血曼陀羅紙帳武士」より 著者:国枝史郎
の噂 しばらく話が途絶えた。春とはいっても、夜は小寒かった。各自に出されてある火桶に、炭火は充分にいけられていたが、広い部屋は、それだけでは暖まらないのであろ....
おせん」より 著者:邦枝完二
を垂らしたように、芝居の衣装をそのまま付けて、すっきりたたずんだ中村松江の頬は、火桶のほてりに上気したのであろう。たべ酔ってでもいるかと思われるまでに赤かった。....
曲亭馬琴」より 著者:邦枝完二
く慇懃《いんぎん》なのを見ると、京伝もどうやら好意が湧いて来たのであろう。心もち火桶を相手の方へ押しやって、もっと近くへ寄るように勧めた。 「ではお言葉に甘えま....