点景[語句情報] »
点景
「点景〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
点景の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「映画時代」より 著者:寺田寅彦
の味がある。「灰汁桶《あくおけ》のしずくやみけりきりぎりす」などはイディルレの好
点景であり、「物うりの尻声《しりごえ》高く名乗りすて」は喜劇中のモーメントである....
「交尾」より 著者:梶井基次郎
きでじっと水の流れるのを見ていたのであるが、その姿が南画の河童とも漁師ともつかぬ
点景人物そっくりになって来た、と思う間に彼の前の小さい流れがサーッと広びろとした....
「草枕」より 著者:夏目漱石
、町人も、村役場の書記も、爺《じい》さんも婆《ばあ》さんも――ことごとく大自然の
点景として描き出されたものと仮定して取こなして見よう。もっとも画中の人物と違って....
「母子叙情」より 著者:岡本かの子
かった。妻もその道具立ての一つであった。彼はこういう生活図面の設計の中に配置する
点景人物として、図面に調和するポーズを若き妻に求めた。 鏡子ははじめこれを嫌っ....
「みみずのたはこと」より 著者:徳冨健次郎
は秋も深い目じるしである。北の方は、此欅の中の欅と下枝を払った数本のはら/\松を
点景にして、林から畑、畑から村と、遠く武蔵野につゞいて居る。
六....
「映画雑感(Ⅳ)」より 著者:寺田寅彦
でたとえば軽い意味の助演者としてのスパークスなどという役者でも決してただのむだな
点景人物ではなくて、言わば個性シンフォニーの中の重要な一楽器としての役目を充分に....
「楢重雑筆」より 著者:小出楢重
スの裏面から青貝が貼りつけてあります、凝り過ぎたものであります、あるいは風景中の
点景人物などは当時の芸者の写真をば切り抜いて、それに彩色を施して、そのまま貼りつ....
「めでたき風景」より 著者:小出楢重
博覧会のためにかなり賑わっていた。道後の公園はちょうど夜桜の真盛りだった。夜桜の
点景人物は概して男と芸妓だった。それらの情景のためにわれわれは多少の悩ましさを感....
「油絵新技法」より 著者:小出楢重
く造られたであろうところの西洋人、西洋名勝、西洋風俗絵、オランダ風車のある風景に
点景人物が添えられたもの等がある。これはその技法はまったく陰影あるところの油絵風....
「大切な雰囲気」より 著者:小出楢重
電車の、自動車の、その他のあらゆる交通機関の、近代都市にとって欠くことのできない
点景のひとつとなった。 それは制帽をかむり、制服をつけ、そしてサァベルをさげた....
「喫煙四十年」より 著者:寺田寅彦
本橋まで歩いてしまった。夏目先生にその話をしたら早速その当時書いていた小説の中の
点景材料に使われた。須永というあまり香ばしからぬ役割の作中人物の所業としてそれが....
「花をうめる」より 著者:新美南吉
すばらしさにおどろかされた。彼女は花びらを一つずつ用い草の葉や、草の実をたくみに
点景《てんけい》した。ときには帯《おび》のあいだにはさんでいる小さい巾着《きんち....
「自由人」より 著者:豊島与志雄
いこれはどうしたことであろうか。そしてその淋しさ悲しさのなかに、つまらないものが
点景として残る。――浅間では、褐色の岩の上に、数羽の鳥が足で跳んでいた。高千穂で....
「潜航艇「鷹の城」」より 著者:小栗虫太郎
あるから、その点にゆき当たると、依然盲人は、この血の絵に凄気を添えている、三つの
点景にすぎないとしか思われないのであった。 その時、片隅にいる一団に遠慮したよ....
「チェーホフの短篇に就いて」より 著者:神西清
求されるのである。読者が演出者たることを強いられる極端な場合の一例である。片言や
点景が、筋の運びのためにあるのではなく、もっと奥深い調和のためにあり、遥か野末か....