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焙
「焙〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
焙の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「箕輪心中」より 著者:岡本綺堂
火の光りがちらちらひらめいて、黒い人影や白い浴衣が薄暗いなかに動いていた。お時も
焙烙《ほうろく》に苧殻《おがら》を入れて庭の入り口に持ち出した。やがて火打ちの音....
「家霊」より 著者:岡本かの子
もうもう》としている。小女と出前持の男は、鍋火鉢の残り火を石の炉《ろ》に集めて、
焙《あた》っている。くめ子は何となく心に浸み込むものがあるような晩なのを嫌に思い....
「半七捕物帳」より 著者:岡本綺堂
した。 「結い立ての天神髷を振りこわして、白い顔をゆがめて、歯を食いしばって、火
焙《ひあぶ》りになって家中《うちじゅう》を転げ廻って、苦しみもがいている女の姿は....
「婦系図」より 著者:泉鏡花
から……」 八 それから名物だ、と云って扇屋の饅頭を出して、茶を
焙じる手つきはなよやかだったが、鉄瓶のはまだ沸らぬ、と銅壺から湯を掬む柄杓の柄が....
「渾沌未分」より 著者:岡本かの子
ころころになって、何か新らしく仕込んだ洒落の一つも披露しながら、片隅の焜炉で火を
焙して、お椀の汁を適度に温め、すぐ箸が執れるよう膳を並べて帰って行く。 「不味い....
「河明り」より 著者:岡本かの子
物事の真面目な相談に与るように、私が押し出してやってある長火鉢に分別らしく、手を
焙りながら、でもその時急に私の方を顧慮する様子をして 「ですが、こちらさんにこん....
「綺堂むかし語り」より 著者:岡本綺堂
茶茶碗は、これらの人々の前に置かれた。調練場の方ではどッと云う鬨の声が揚がった。
焙烙調練が始まったらしい。 わたしは巻煙草を喫みながら、椅子に寄りかかって、今....
「菎蒻本」より 著者:泉鏡花
ただしさ、見附の火の見|櫓が遠霞で露店の灯の映るのも、花の使と視めあえず、遠火で
焙らるる思いがしよう、九時というのに屋敷町の塀に人が消えて、御堂の前も寂寞とした....
「フランダースの犬」より 著者:菊池寛
暖です。炉のなかでは、大きな榾がぱちぱちと赤く燃え、隣近所の人々は、夕飯のために
焙った鵞鳥の肉|一片とお酒一ぱいとにありつくために、交る交るやって来ます。アロア....
「母への追慕」より 著者:上村松園
たたびうとうとと睡りにおちたものである。 ぱらばら、ぱらぱらと、しめったお茶を
焙じている音を、何か木の葉でも降る音にききながら…… 私の十九のとき、隣りから....
「巴里のキャフェ」より 著者:岡本かの子
塗った胡桃の串刺しはいかが?」 「燻製鮭のサンドウイッチ、キァビヤ。――それから
焙玉子にアンチョビの……。」 少女達がいろいろなサンドウイッチを手頃な荷にして....
「豆腐買い」より 著者:岡本かの子
た雀斑だらけの母親をも思い出した。 五六軒先の荒物屋の溝板と溝板の上のバケツや
焙烙が鳴って十六七の男の子が飛出して来た。右側に通る電車の後を敏捷に突き切り途端....
「バットクラス」より 著者:岡本かの子
のをみると成程カフェ・カクテールとはよく名を付けたものだ。これは熱帯国の木の実が
焙じられた時、うめき出す濃情な苦渋の色そっくりだ。酒であって珈琲、珈琲であって酒....
「わが母を語る」より 著者:上村松園
二時頃、目をさますと、ザザァザザァという音がする。「なんや?」と思うとそれは母が
焙炉の茶をかえしている音でした。茶商売では、茶を飲み分けることができないとあきま....
「扉の彼方へ」より 著者:岡本かの子
結婚式の夜、茶の間で良人は私が堅くなってやっと
焙れてあげた番茶をおいしそうに一口飲んでから、茶碗を膝に置いて云いました。 「こ....