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然し
「然し〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
然しの前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「影」より 著者:芥川竜之介
き上らせた。生憎《あいにく》電燈の光が後《うしろ》にあるから、顔かたちは誰だか判
然しない。が、ともかくもその姿が、女でない事だけは確かである。陳は思わず塀の常春....
「奇遇」より 著者:芥川竜之介
環《みみわ》が幕の間《あいだ》に、ちらめくような気がするが、確かにそうかどうか判
然しない。現に一度なぞは玉のような顔が、ちらりとそこに見えたように思う。が、急に....
「奇怪な再会」より 著者:芥川竜之介
っている。円い窓から外を見ると、黒い波の重《かさ》なった向うに、月だか太陽だか判
然しない、妙に赤光《あかびかり》のする球《たま》があった。乗合いの連中はどうした....
「水の三日」より 著者:芥川竜之介
。いまだに、あの時のことを考えると、はがきへどんなことを書いたんだか、いっこう判
然しない。これは原君の所へ来た、おばあさんだが、原君が「宛名《あてな》は」ときく....
「葱」より 著者:芥川竜之介
声を出した。
「なあに。」
田中君は大様《おおよう》な返事をしながら、何とも判
然しない微笑を含んだ眼で、じっとお君さんの顔を眺めた。それから急に身ぶるいを一つ....
「西郷隆盛」より 著者:芥川竜之介
流れるように通りすぎるが、それも遠くの家の明りだか、汽車の煙突から出る火花だか判
然しない。その中でただ、窓をたたく、凍りかかった雨の音が、騒々しい車輪の音に単調....
「猿蟹合戦」より 著者:芥川竜之介
った。なった動機は貧困のためか、彼女自身の性情のためか、どちらか未《いまだ》に判
然しない。蟹の長男は父の没後、新聞雑誌の用語を使うと、「飜然《ほんぜん》と心を改....
「葬儀記」より 著者:芥川竜之介
を見たのは、いまだによく覚えている。
それから、何がどうしたか、それは少しも判
然しない。ただ久米が僕の肘《ひじ》をつかまえて、「おい、あっちへ行こう」とかなん....
「素戔嗚尊」より 著者:芥川竜之介
の間、幸福そのもののような日を送った。ところがその頃から部落には、作者は誰とも判
然しない、新しい歌が流行《はや》り出した。それは醜《みにく》い山鴉《やまがらす》....
「少年」より 著者:芥川竜之介
ょっとその本を覗《のぞ》きこんだ、Essai sur les ……あとは何だか判
然しない。しかし内容はともかくも、紙の黄ばんだ、活字の細《こま》かい、とうてい新....
「侏儒の言葉」より 著者:芥川竜之介
た。しかし修辞につりこまれなければ、どちらがほんとうの「正義の敵」だか、滅多に判
然したためしはない。
日本人の労働者は単に日本人と生まれたが故に、パナマから退....
「馬の脚」より 著者:芥川竜之介
は××胡同《ことう》の社宅の玄関を飛び出した後《のち》、全然どこへどうしたか、判
然しないと言わなければならぬ。
半三郎の失踪《しっそう》も彼の復活と同じように....
「兄貴のような心持」より 著者:芥川竜之介
貴らしい気がすればこそである。 この兄貴らしい心もちは、勿論一部は菊池の学殖が
然しめる所にも相違ない。彼のカルテュアは多方面で、しかもそれ/″\に理解が行き届....
「初雪」より 著者:秋田滋
寐間をぬけ出ると、階段を降り、庭の戸を開けた。大地は雪に蔽われて、死んだように寂
然している。彼女はいきなりその素足を氷のように冷たい、柔かな粉雪のなかへ一歩踏み....
「スリーピー・ホローの伝説」より 著者:アーヴィングワシントン
ィッパーウィル(原註)の鳴く声。雨蛙の不吉な声は嵐の前ぶれだ。梟のさびしい声。突
然しげみの中でがさがさいうのは、鳥がおどろいて巣から飛びたつ音だ。蛍さえもひどく....