然して[語句情報] »
然して
「然して〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
然しての前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「地球発狂事件」より 著者:海野十三
れわれの時代に実現するとは思わなかった。だから、新しいコロンブスを迎える用意は全
然していなかったのだ」 「新しいコロンブスというのは何者ですか」 「ああ、それは....
「婦系図」より 著者:泉鏡花
も目の見えない娘が一番恐いわ。母さん、と云って、あの、見えない目で見られると、悚
然してよ。私は元気でいるけれど、何だか、そのために生身を削られるようで瘠せるのよ....
「かんかん虫」より 著者:有島武郎
心地としっくり調子を合わせた。 私は立った儘大運搬船の上を見廻して見た。 寂
然して溢れる計り坐ったり立ったりして居るのが皆んなかんかん虫の手合いである。其の....
「鷭狩」より 著者:泉鏡花
、斜に向うへ離れる時、いま見たのは、この女の魂だったろう、と思うほど、姿も艶に判
然して、薄化粧した香さえ薫る。湯上りの湯のにおいも可懐いまで、ほんのり人肌が、空....
「歌行灯」より 著者:泉鏡花
深く突込んだ。片手で狙うように茶碗を圧えて、 「ね、古市へ行くと、まだ宵だのに寂
然している。……軒が、がたぴしと鳴って、軒行燈がばッばッ揺れる。三味線の音もした....
「湯女の魂」より 著者:泉鏡花
ておりますんでございますが、そんな家はある筈はございません、破家が一軒、それも茫
然して風が吹けば消えそうな、そこが住居なんでございましょう。お神さんは私を引入れ....
「照葉狂言」より 著者:泉鏡花
お頻りにあたりを見廻して、 「変だよ、ちょいとお前さんも見たろうね、何だか私ゃ茫
然してたが、たしかあの猫が鳩をくわえて飛込んだっけね。変な気がするよ、つい今しが....
「黒百合」より 著者:泉鏡花
っかと下〆に女|扇子を差し、余所行の装、顔も丸顔で派手だけれども、気が済まぬか悄
然しているのであった。 「お婆さん、私は直帰るんですが、」 「あい、」 「どうぞ....
「沼夫人」より 著者:泉鏡花
て寝た窓から掛けて、洋燈がそこで消えた卓子の脚を伝って床に浸出す見当で、段々|判
然して、ほたりと、耳許で響くかとするとまた幽になる。幽になって外の木の葉を、夜露....
「寄席と芝居と」より 著者:岡本綺堂
のは事実で、現にその墓は浅草高原町の東陽寺内に存在したのであるが、詳細の伝記は判
然していないらしく、かの「塩原多助一代記」は殆んど円朝の創作で、大体は大岡政談の....
「初雪」より 著者:秋田滋
寐間をぬけ出ると、階段を降り、庭の戸を開けた。大地は雪に蔽われて、死んだように寂
然している。彼女はいきなりその素足を氷のように冷たい、柔かな粉雪のなかへ一歩踏み....
「妖怪学一斑」より 著者:井上円了
これを蓋然といわなければなりません。しかしながら、この三者はその分界がいたって判
然しておりません。そもそも原因あれば必ず結果あり、結果あれば原因ありということは....
「飛騨の怪談」より 著者:岡本綺堂
迂しい奴、忌々しい奴と、市郎は惘れを通り越して、稍勃然とした。 見ればお葉は嫣
然して、相変らず小手招ぎをしている。市郎は黙って霎時睨んでいた。 「何故そんな怖....
「仏教人生読本」より 著者:岡本かの子
易な考え慣れた光明とはかなり勝手が違うのであります。従って、そんなに在ることは判
然していながら、判然在るようには感じられないのであります。ただ、信ずる一念が明る....
「青い風呂敷包」より 著者:大倉燁子
行こうと思ったが、この場を離れたら百合子が嘸ぞ困るだろうと思い、思案にあまって茫
然していると、吉川が、 「美佐ちゃん、邪魔すると承知しないぞ」恐い眼でじろりと睨....