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「煙る〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す

煙るの前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
土曜夫人」より 著者:織田作之助
た。暫くして、また戸をたたいた。そして、セントルイスの前をはなれて、カラ子は雨に煙る木屋町の灯の方へ歩き出したが、急に踵をかえして、しかし、トボトボとその横丁を....
老妓抄」より 著者:岡本かの子
った庭樹の青嵐を振返ってから、柚木のがっしりした腕を把《と》った。 さみだれが煙るように降る夕方、老妓は傘をさして、玄関横の柴折戸《しおりど》から庭へ入って来....
籠釣瓶」より 著者:岡本綺堂
でふたたび吉原の空を見た。春の癖とはいいながら、晴れた空でも少しはなれた廓の上は煙るように霞んでいた。 ゆうべは八橋から手紙を受取った。きょうは妹に一度は行っ....
蠅男」より 著者:海野十三
偵帆村荘六も、いま一歩というところで、無念にも蠅男とお竜の術中に陥り、いま湯気に煙る砂風呂のうちに惨殺されようとしているのであった。なんという無慚、なんという口....
茶の本」より 著者:岡倉覚三
た袖に雪村を包んで、大きく開いた傷口にこれを突っ込んだ。火事はついにしずまった。煙る余燼の中に、半焼の死骸があった。その中に、火の災いをこうむらないで、例の宝物....
金魚撩乱」より 著者:岡本かの子
れど、やっぱりたかが金魚ですからね」 すると真佐子は漂渺とした顔付きの中で特に煙る瞳を黒く強調させて云った。 「あなたは金魚屋さんの息子さんの癖に、ほんとに金....
食魔」より 著者:岡本かの子
ークを妹娘の胸さきへ移した。 お絹は滑らかな頸の奥で、喉頭をこくりと動かした。煙るような長い睫の間から瞳を凝らしてフォークに眼を遣り、瞳の焦点が截片に中ると同....
伯爵の釵」より 著者:泉鏡花
と滑って、鶴ケ島をさして滑かに浮いて行く。 さまでの距離はないが、月夜には柳が煙るぐらいな間で、島へは棹の数百ばかりはあろう。 玉野は上手を遣る。 さす手....
売色鴨南蛮」より 著者:泉鏡花
と赤い歯茎を剥いた、人を啖う鬼の口に髣髴する。……その森、その樹立は、……春雨の煙るとばかり見る目には、三ツ五ツ縦に並べた薄紫の眉刷毛であろう。死のうとした身の....
地虫」より 著者:小栗虫太郎
目指して歩んでゆく。と、ちょうどその頃、お悦という姐さん株の一人が、早苗と湯気に煙る窓越しの雨を眺めていた。 「ねえ、この淋しさったら、お話しじゃないじゃないの....
ドーヴィル物語」より 著者:岡本かの子
口惜しがる度に小田島を強く小突く。彼は暴戻な肘で撃れる度に、何故かイベットの睫の煙る眼ざしを想出す。 ――あんた、後生だから、あの女にだけは惚れないでよ。他の女....
中世の文学伝統」より 著者:風巻景次郎
の見ている朧々たる月ほど、意欲が影をひそめた詠歎的な自然はない。秋の夕暮の水色に煙る薄靄は、そのまま私たちをも彼らの仲間のひとりと化して、風もながれぬ自然のなか....
星の子」より 著者:小川未明
にいたりました。そこには、大きな河が音をたてて流れていました。あたりは、一|面に煙るように青白い月の光にさらされています。この河のふちは、一|帯に貧民窟が建て込....
空中征服」より 著者:賀川豊彦
のごとく、煙の立ちこむる都にてはいみじく美しき恋は遂げらるべくもこれなく候。恋の煙るをただただ怖れ候え」 なるほど、淀君は賢いことを言うと、賀川市長は感心して....
雨の宿」より 著者:岩本素白
館には、思いがけず海北友松の特別展覧会が開かれても居る。祇園の石段を上って、雨に煙る高台寺下の静かな通りを清水へ抜ける道筋も悪くはない。そんなことを寝たまま考え....