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煤煙
「煤煙〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
煤煙の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「お時儀」より 著者:芥川竜之介
都会に住んでいる悲しさには悪臭と呼ばれる匂《におい》ばかりである。たとえば汽車の
煤煙の匂は何人《なんびと》も嗅《か》ぎたいと思うはずはない。けれどもあるお嬢さん....
「或る女」より 著者:有島武郎
太陽の光が、紅葉坂《もみじざか》の桜並み木を黄色く見せるほどに暑く照らしていた。
煤煙《ばいえん》でまっ黒にすすけた煉瓦《れんが》壁の陰に汽車が停《と》まると、中....
「蠅男」より 著者:海野十三
が、どうして世間に知られるようにはなったのであろうか? それは、臭いであった。
煤煙の臥床に熟睡していたグレート大阪が、ある寒い冬の朝を迎えて間もないころ、突如....
「河明り」より 著者:岡本かの子
ま投影させて、よろけ縞のように揺らめかし、その遙かの末に新嘉坡の白亜の塔と高楼と
煤煙を望ましている海の景色に眼を慰めていた。だが、心はまだしきりに今朝ジョホール....
「英本土上陸作戦の前夜」より 著者:海野十三
を、飽かず眺めていた。 8 列車の窓から、マンチェスター市の空を蔽う
煤煙が、そろそろ見えてきた。 アンは、まだ眠っている。 仏天青は、まだ眠る気....
「太平洋雷撃戦隊」より 著者:海野十三
二隻現ル』」伝令です。 「よし、御苦労」 行く手にあたって、高くあがった微かな
煤煙は、だんだんと大きくなって来ます。よく見ると、成程それは×の二等駆逐艦が二隻....
「馬地獄」より 著者:織田作之助
している。そんなことが一層この橋の感じをしょんぼりさせているのだろう。川口界隈の
煤煙にくすんだ空の色が、重くこの橋の上に垂れている。川の水も濁っている。 とも....
「照葉狂言」より 著者:泉鏡花
絶えて、大路の片隅に果物売の媼一人露店出して残りたり。三角|形の行燈にかんてらの
煤煙黒く、水菓子と朱の筆もて書いたる下に、栗を堆く、蜜柑、柿の実など三ツ五ツずつ....
「亡び行く江戸趣味」より 著者:淡島寒月
は失われて、西洋人が讃美し憧憬する広重の錦絵に見る、隅田の美しい流れも、現実には
煤煙に汚れたり、自動車の煽る黄塵に塗れ、殊に震災の蹂躙に全く荒れ果て、隅田の情趣....
「世界怪談名作集」より 著者:岡本綺堂
高い塀にかこまれている。この庭の敷石はひどくしめっているので、その湿気とほこりと
煤煙とのために、わたしたちが歩くたびに薄い足跡が残った。 わたしは今や初めて、....
「歯車」より 著者:芥川竜之介
ペンを休める度にぼんやりとこの雪を眺めたりした。雪は莟を持った沈丁花の下に都会の
煤煙によごれていた。それは何か僕の心に傷ましさを与える眺めだった。僕は巻煙草をふ....
「蜜柑」より 著者:芥川竜之介
それから車内の誰かに祝儀の礼を云っている赤帽――そう云うすべては、窓へ吹きつける
煤煙の中に、未練がましく後へ倒れて行った。私は漸くほっとした心もちになって、巻煙....
「潜航艇「鷹の城」」より 著者:小栗虫太郎
体である。それが、悔んでも及ばぬところの室戸丸の不幸であった。 煙筒は、真黒な
煤煙に混じえて、火焔を吐き出しはじめた。船体が、ビリビリ震動して、闇に迫る怪艇の....
「西航日録」より 著者:井上円了
ろ工場のために汚され、ついに濁流となるは、余が遺憾とするところなり。また、樹木は
煤煙のために深黒に化しおるも、また同感なり。要するに、工業と風景とは両立し難きも....
「空中征服」より 著者:賀川豊彦
何を言うても、大阪の空中征服であると思います。今日のごとき空を持ち、あの煙突と、
煤煙を持っていては、とても大阪市民は、この後五十年の健康を続けることは出来まいと....