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燻し
「燻し〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
燻しの前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「白峰山脈縦断記」より 著者:小島烏水
えた、彼は鉈で杖を裂いた、杖の心まで雨は透っていないから、細い粗朶が忽ち出来る、
燻してどうかこうか火が点いた、そうすると白烟が低い天幕の中を、圧されて出る途がな....
「芋」より 著者:佐左木俊郎
い古した、柄に草木の緑色が乾着いている、刃先の白い坏を担いで、鉈豆煙管で刻煙草を
燻しながら、芋蔓の絡んでいそうな、籔から籔と覗き歩いた。 叢の中を歩く時などは....
「都会地図の膨脹」より 著者:佐左木俊郎
。何処の道路だって、泥溝際のどころは少し残してあるもんだから。」 甚吉は煙草を
燻していて、彼等の方には見向きもしなかった。 「じゃ、甚さんは、自分の土地が、発....
「夜叉ヶ池」より 著者:泉鏡花
寝の時―― 百合 知りませんよ。(莞爾俯向く。) 晃 煩く薮蚊が押寄せた。裏縁で
燻してやろう。(納戸、背後むきに山を仰ぐ)……雲の峰を焼落した、三国ヶ岳は火のよ....
「露肆」より 著者:泉鏡花
渋色の逞しき手に、赤錆ついた大出刃を不器用に引握って、裸体の婦の胴中を切放して
燻したような、赤肉と黒の皮と、ずたずたに、血筋を縢った中に、骨の薄く見える、やが....
「ある女の生涯」より 著者:島崎藤村
ませた。おげんは娘から勧められた煙管の吸口を軽く噛み支えて、さもうまそうにそれを
燻した。子の愛に溺れ浸っているこの親しい感覚は自然とおげんの胸に亡くなった旦那の....
「黒百合」より 著者:泉鏡花
子、油、蚊遣香までも商っている婆さんが来て、瓦鉢の欠けた中へ、杉の枯葉を突込んで
燻しながら、庭先に屈んでいるが、これはまたお雪というと、孫も子も一所にして、乳で....
「歌の円寂する時」より 著者:折口信夫
りこんでも、歌の微妙な脈絡はこわれ勝ちなのである。近代生活も、短歌としての匂いに
燻して後、はじめて完全にとりこまれ、理論の絶対に避けられねばならぬ詩形が、更に幾....
「怪異黒姫おろし」より 著者:江見水蔭
滝之助であった。 「おう、持っていた。さァ」 初夏でも夜は山中の冷え、炉には蚊
燻しやら燈火代りやらに、松ヶ根の脂肪の肥えた処を細かに割って、少しずつ燃してあっ....
「わが童心」より 著者:佐藤垢石
ろがった六里ヶ原だ。五月下旬の六里ヶ原の叢林は、漸く若葉が萌えたつ時だ。茶、黄、
燻し銀、鼠、鬱紺、淡縹、群がる梢に盛り上がる若葉はなんと多彩な艶に、日光を吸い込....
「決闘場」より 著者:岡本かの子
ワルトンは不審そうに黙ってアイリスと同じように、晩春の午後の陽射しを受けて淋しく
燻し銀色に輝く白樺の幹や、疎らな白樺の陰影に斜めに荒い縞目をつけられて地味に映え....
「雪柳」より 著者:泉鏡花
げるのでもない。安達ヶ原でない証には、出刃も焼火箸も持っていない、渋団扇で松葉を
燻していません。ただ黒い瓶を一具、尻からげで坐った腰巻に引きつけて、竹箆で真黒な....
「仏教人生読本」より 著者:岡本かの子
かに聞えて来ましたが、静寂な天地はたちまちそれを吸い取って、まだ闇の気配の残る、
燻しをかけた銀世界にはなおも霏々として雪は降り続くのでした。小径へ入ると、折れた....
「フレップ・トリップ」より 著者:北原白秋
それを思い当った。 今の私は以前の私ではない。現実という黒い鴉が私を見ている。
燻し鰊の私を。 白き猫膝に抱けばわが思ひ音なく暮れて病む心地する この浮薄と衒....
「黒部川奥の山旅」より 著者:木暮理太郎
る。その一つ此窓の大岩柱は直ぐ目の前にがっしりと根を張って、曇りを帯びた朧の雪が
燻し銀の金具の様に根元を飾っている。最高点は其北に在って赤錆びた圭角が鑿のように....