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「燻ぶ〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す

燻ぶの前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
黒死館殺人事件」より 著者:小栗虫太郎
鮮でないために、妙に息苦しく、もしこの際|松火を使ったとしたら、それは、輝かずに燻ぶり消えるだろうと思われた。それに、館中の響がこの空間には異様に轟いてきて、時....
仮装人物」より 著者:徳田秋声
していてもらうか、どこか堅いところへ再縁でもして、落ち着いて欲しかったが、田舎に燻ぶっていられる葉子でないことも解っていた。葉子がこの兄や母に心配をかけたことも....
谷より峰へ峰より谷へ」より 著者:小島烏水
ッと啼いている、どす黒い綿雲がちぎれて、虚空をボツボツ飛んでゆく間から、三日月が燻ぶし銀のように、冷たく光っている、嘉代吉や人夫の寝顔までが、月のうす明りで、芋....
敵討札所の霊験」より 著者:三遊亭円朝
も愛想が尽きて寄せ附けねえと云うので、己も行ける義理は無えからなア、土浦へ行って燻ぶって居たが、その中に瘡は吹出す、帰る事も出来ず、それからまア漸との事て因幡町....
踊る地平線」より 著者:谷譲次
にその時のことを話した。 『火よりも煙りが恐ろしいのです。それはまるで古帽子から燻ぶる反動思想のように――。』 しかし彼の聴手はフランシス・スワン夫人だけだっ....
松の操美人の生埋」より 著者:三遊亭円朝
いって、私はとう/\勘当となって、仕方が無えから江戸へ往って小兼の処に足掛二年も燻ぶって居たが、彼奴も私にゃア大分実をつくして呉れたので、兄貴も余り義理が悪いか....
露肆」より 著者:泉鏡花
々を冷い風が渡る癖に、店を一ツ一ツ一重ながら、茫と渦を巻いたような霧で包む。同じ燻ぶった洋燈も、人の目鼻立ち、眉も、青、赤、鼠色の地の敷物ながら、さながら鶏卵の....
星女郎」より 著者:泉鏡花
つきますまい。 (お火が消えましたかしら。) とちょっと翳した、火入れは欠けて燻ぶったのに、自然木を抉抜の煙草盆。なかんずく灰吹の目覚しさは、……およそ六貫目....
まじょりか皿」より 著者:寺田寅彦
先を覗くのが一つの楽しみである。ことに懐に金のある時にそうである。陰気な根津辺に燻ぶっていて、時たま此処らの明るい町の明るい店先へ立つと全く別世界へ出たような心....
枯菊の影」より 著者:寺田寅彦
てまで学資を給してくれた父を、まあ失望させたような有様で、草深い田舎にこの年まで燻ぶらせているかと思うと、何となく悲しい心持になってしまうのだ。三十にしてなお俗....
塩原多助一代記」より 著者:三遊亭円朝
と見えて、傍の方に山菅で作った腰簑に、谷地草で編んだ山岡頭巾を抛り出してあって、燻ぶった薬鑵と茶碗が二つと弁当が投げ出してあるを見て、 傳「宇之さん、水のある処....
沙漠の古都」より 著者:国枝史郎
利用したのである。 ある日私はいつものように自分の小屋の石のストーブで兎の肉を燻ぶしていた。それがすっかり出来上がった時|果実の絞り汁に充分浸して小屋から外へ....
斎藤緑雨」より 著者:内田魯庵
っていた。)緑雨が一葉の家へしげしげ出入し初めたのはこの時代であって、同じ下宿に燻ぶっていた大野洒竹の関係から馬場孤蝶、戸川秋骨というような『文学界』連と交際を....
挿話」より 著者:徳田秋声
と辰之助さんを見て、すぐ呼出しをかけたわけなんです」 「なるほどね。それじゃ家に燻ぶっちゃいられないわけだね。今でも続いているの」 「さあどうやら」お絹は擽った....
世間師」より 著者:小栗風葉
、昨夜想像したよりもいっそうあたりは穢ない。天井も張らぬ露きだしの屋根裏は真黒に燻ぶって、煤だか虫蔓だか、今にも落ちそうになって垂下っている。四方の壁は古新聞で....