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「爛熟〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す

爛熟の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「いき」の構造」より 著者:九鬼周造
きに、はじめて「いき」の真相を把握《はあく》し得たのである。「いき」の「諦め」は爛熟頽廃《らんじゅくたいはい》の生んだ気分であるかもしれない。またその蔵する体験....
街頭から見た新東京の裏面」より 著者:杉山萠円
煎じ詰めたものであった。そうして、昔、貴族階級や武士階級の文化がそれぞれブル式に爛熟して亡びたように、彼等の文化も平民的の形をとったブル気分を帯びつつ亡びてしま....
天主閣の音」より 著者:国枝史郎
。高烏帽子を冠り水干を着、長太刀をはいて、「静」を舞った。年の頃は二十二三、豊満爛熟の年増盛りで、牡丹花のように妖艶であった。 「可いな」と宗春は心の中で云った....
夜明け前」より 著者:島崎藤村
の襟のかかった着物を着て水茶屋の暖簾のかげに物思わしげな女のなまめかしさ。極度に爛熟した江戸趣味は、もはや行くところまで行き尽くしたかとも思わせる。 やがて半....
死者の書」より 著者:折口信夫
額の、故もなくひよめいた長い日の、後である。二上山の峰を包む雲の上に、中秋の日の爛熟した光りが、くるめき出したのである。雲は火となり、日は八尺の鏡と燃え、青い響....
ダス・ゲマイネ」より 著者:太宰治
甘酒屋で、はらみ猫、葉桜、花吹雪、毛虫、そんな風物のかもし出す晩春のぬくぬくした爛熟の雰囲気をからだじゅうに感じながら、ひとりしてビイルを呑んでいたのであるが、....
可能性の文学」より 著者:織田作之助
いらず」は素直ではないが素朴である。フランスのように人間の可能性を描く近代小説が爛熟期に達している国で、サルトルが極度に追究された人間の可能性を、一度原始状態に....
美の日本的源泉」より 著者:高村光太郎
の健康性と清浄性とによって起死回生せしめねばならないのである。当今世界の近代美は爛熟と廃頽と自暴自棄とに落ち込んでいる。この一切をもう一度新鮮な黎明の美にかえさ....
増上寺物語」より 著者:佐藤垢石
廟は豊麗精美の妙を尽くし、壮大な桃山趣味から脱して真に江戸中期、つまり元禄時代の爛熟した芸術の粋を遺憾なく漂わせ、見る人をしてまことに去らしめない。 文昭院に....
藤十郎の恋」より 著者:菊池寛
園清水東山一帯の花が先ず開く、嵯峨や北山の花がこれに続く。こうして都の春は、愈々爛熟の色を為すのであった。 が、その年の都の人達の心を、一番|烈しく狂わせてい....
淡島椿岳」より 著者:内田魯庵
人の女遊びは一概に不品行呼ばわりする事は出来ない。このデカダン興味は江戸の文化の爛熟が産んだので、江戸時代の買妓や蓄妾は必ずしも淫蕩でなくて、その中に極めて詩趣....
二葉亭四迷の一生」より 著者:内田魯庵
ために二葉亭は金を作らねばならなくなった。 その時分、文壇の機運はいよいよ益々爛熟し、紅露は相対塁して互に覇を称し、鴎外は千朶山房に群賢を集めて獅子吼し、逍遥....
中世の文学伝統」より 著者:風巻景次郎
漢字漢文を理解し得たのも決して遅いことではない。けれども異国語の難関をのり越え、爛熟した生活感情を咀嚼してまで、老大国の文学を机辺の風雅とすることは、あまりに稚....
新古細句銀座通」より 著者:岸田劉生
不可もないものとなる事であろう。 かくて、趣味というものはどうしても資本主義の爛熟した時代が最もいいものとなる。そしてわが邦江戸時代、封建の夢三百年の時代は正....
秋の鬼怒沼 」より 著者:木暮理太郎
であったが判然しない。 湯元に来ると二度も雪が降ったという程あって、紅葉は既に爛熟して、次の木枯には一たまりもなく吹き掃われそうである。濃紅の色の中にもはや凋....