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物思う
「物思う〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
物思うの前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「突貫紀行」より 著者:幸田露伴
ける。ことさら雨ふりいでて、秋の夜の旅のあわれもいやまさりければ、 さらぬだに
物思う秋の夜を長み いねがてに聞く雨の音かな 食うものいとおかしく、山....
「幽霊塔」より 著者:黒岩涙香
の間だから、誰しも眠くなる時ではあるのだ。
彼の鼾と汽車の音と轟々相い競うて、
物思う余の耳には誠に蒼蝿く感じたが、余も何時の間にやら眠って了った、何時間経った....
「田舎教師」より 著者:田山花袋
そのころは秋の気はあたりに満ちて、雨の降る日など単衣一枚では冷やかに感じられた。
物思うかれの身に月日は早くたった。 高等学校の入学試験を受けに行った小島は第四....
「みみずのたはこと」より 著者:徳冨健次郎
たくて、夏の夕にふさわしい。花弁の一つずつほぐれてぱっと開く音も聴くに面白い。独
物思うそゞろあるきの黄昏に、唯一つ黙って咲いて居る此花と、はからず眼を見合わす時....
「連句雑俎」より 著者:寺田寅彦
にとってはむしろ問題にしないほうがよいのであろう。そうして単に雪後の春月に対して
物思う姿の余情を味わえば足りるであろう。 連想には上記のように内容から来るもの....
「大菩薩峠」より 著者:中里介山
もらって、ここへもおまいりをして行くつもりです。香と花とを捧げ終って、駒井は何か
物思うことあるが如く、やや離れて、天樹院の五輪塔を暫くながめておりましたが、 「....
「大菩薩峠」より 著者:中里介山
しかし、昔も今もこの風車は、風の力では廻らないが、人間が廻せばクルクルと廻る。
物思うことの多い若き男女は、熊野の神前に祈って、そうしてこの車をクルクルと廻せば....
「大菩薩峠」より 著者:中里介山
馬のために、心の痛手を病むことが少なくなって来ていました。それを、このごろ再び、
物思う身となりました。昔は人の身、今はわが身というような、言い知らぬ心の痛みが、....
「万葉秀歌」より 著者:斎藤茂吉
である。一首は、麗らかに照らしておる春の光の中に、雲雀が空高くのぼる、独居して、
物思うとなく物思えば、悲しい心が湧くのを禁じ難い、というので、万葉集の大部分の歌....
「樋口一葉」より 著者:長谷川時雨
寄せてくれる人々に対して誠を語っている。とはいえ、それは思われるに対してである。
物思う側の彼女をも、思われた唯《ただ》一人の幸福者をも記《しる》そう。 ....
「悲しい誤解」より 著者:豊島与志雄
寄り集まって、雲のように、心の青空を蔽うのである。すると私は生気なく、しみじみと
物思う気持ちになる。今朝ほどからそうだった。――昨夜、父の友人の相手をして、ウイ....
「街はふるさと」より 著者:坂口安吾
せずにジリジリ衰弱するのを見てわきまえている腹立たしさにくらべれば、何かのために
物思うヒマもなく疲れる方が、かえって安らかなのだ。 放二は明け方になって、よく....
「駅夫日記」より 著者:白柳秀湖
長の切なる忠告で、来年の七月まで思いとまるということになって私はホッと一息した。
物思う身に秋は早くも暮れて、櫟林に木枯しの寂しい冬は来た。昨日まで苦しい暑さを想....
「式部小路」より 著者:泉鏡花
ろう、と眼光|炬のごとく、賭物の天丼を照らした意気の壮なるに似ず、いいかけて早や
物思う。 思う壺と、煙草盆のふちを、ぱちぱちと指で弾いて、敗軍一時に盛り返し、....
「妾宅」より 著者:永井荷風
《め》開《ひら》きかける様子といい、長火鉢の向うに長煙管取り上げる手付きといい、
物思う夕まぐれ襟《えり》に埋《うず》める頤《おとがい》といい、さては唯《ただ》風....