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物象
「物象〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
物象の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「偸盗」より 著者:芥川竜之介
がらん》の屋根を、おぼつかなく光らせながら、ほのかな明るみと影との中に、あらゆる
物象を、ぼんやりとつつんでいる。町をめぐる山々も、日中のほとぼりを返しているので....
「毛利先生」より 著者:芥川竜之介
、しきりに何か話している三四人の給仕の姿も見えた。そうして――こう自分が鏡の中の
物象を順々に点検して、煖炉の前に集まっている給仕たちに及んだ時である。自分は彼等....
「冬の蠅」より 著者:梶井基次郎
私はそれをも偽瞞と言うのではない。しかし直射光線には偏頗《へんぱ》があり、一つの
物象の色をその周囲の色との正しい階調から破ってしまうのである。そればかりではない....
「冬の日」より 著者:梶井基次郎
穉《おさな》いときの古ぼけた写真のなかに、残っていた日向《ひなた》のような弱陽が
物象を照らしていた。 希望を持てないものが、どうして追憶を慈《いつく》しむこと....
「惜みなく愛は奪う」より 著者:有島武郎
の伝統から遁れ出ることが出来ないで、その色その面を形の奴婢にのみ充てていた。色は
物象の面と空間とを埋めるために、面は
物象の量と積とを表わすためにのみ用いられた。....
「宇宙の始まり」より 著者:アレニウススヴァンテ
、地球の起源について、少し後れてはまた、天の起源――換言すればこの地球以外にある
物象の起源――に関する疑問に逢着する。こういう場合には、たいてい、世界の起源につ....
「母子叙情」より 著者:岡本かの子
ました。だが彼の画風は、理窟っぽいぎすぎすしたところは毛頭ありません。彼の聡明な
物象の把握力、日本人特異の単純化と図案化。それに何という愛憐の深い美の象徴の仕方....
「海底都市」より 著者:海野十三
たのだ。 昨日開いた第一回目の知らせには「君は今寄宿舎の自室に居る。机の上には
物象《ぶっしょう》の教科書の、第九頁がひらいてあり、その上に南京豆が三粒のってい....
「時計屋敷の秘密」より 著者:海野十三
霊やお化けが今実在するにしてもだ、その幽霊やお化けは、かならずぼくらの習っている
物象《ぶっしょう》の原理にしたがうものでなくてはならない」 「四本君のいうことは....
「夢は呼び交す」より 著者:蒲原有明
異な個性と空想とが全画面に混り合い、融け合っている。印象は重んずるが、その表現は
物象に直接ではなくて、幻想のるつぼを通して来たものである。真の意味における創作で....
「ピストルの使い方」より 著者:泉鏡花
斗樽ほどの大首を斜めに仰ぐ。……俗に四斗樽というのは蟒の頭の形容である。濫に他の
物象に向って、特に銅像に対して使用すべきではない。が、鋳たものが運八|父子で、多....
「妖怪学」より 著者:井上円了
は、この理想の本体を真の大妖怪というなり。もしまた、我人、外界にありて千万無量の
物象を観察し去りて、その裏面に一貫せる理法の中心に洞達し、その実体いかんを想見す....
「日本画と線」より 著者:上村松園
つもので、色彩を先にすべきものだとは思いません。線の長短や緩急が互いに交錯して、
物象の内面外面を現わす妙味は、到底言葉に云い尽せません。私が今の若い人達にお願い....
「宝永噴火」より 著者:岡本かの子
火は映って関東の方に真赤な大陸が生れて浮んでいるように見えた。それに較べて大地の
物象はあまりに憐れな小さい姿となった。慧鶴はこんな、さまざまな今までには覚えたこ....
「動く絵と新しき夢幻」より 著者:小川未明
空間的に書くことになる。元来これは絵画の領域に属するもので、絵画の上ではあらゆる
物象だの、影だのを色彩で以て平たい板の上に塗るので、時間的に事件を語っているもの....