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物陰
「物陰〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
物陰の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「或る女」より 著者:有島武郎
くままに身を斜めにしてからく重心を取りながら、よろけよろけブリッジに近いハッチの
物陰までたどりついて、ショールで深々と首から下を巻いて、白ペンキで塗った板囲いに....
「運命論者」より 著者:国木田独歩
ども如何《どう》いうものか僕は小児《こども》の時分から学問が嫌《きら》いで、たゞ
物陰《ものかげ》に一人《ひとり》引込んで、何を考《かん》がえるともなく茫然《ぼん....
「ある心の風景」より 著者:梶井基次郎
深夜の町であるのか、わからなかった。暗のなかの夾竹桃はそのまま彼の憂鬱であった。
物陰の電燈に写し出されている土塀、暗と一つになっているその陰影。観念もまたそこで....
「河明り」より 著者:岡本かの子
である。くれない極まって緑礬の輝きを閃かしている。物の表は永劫の真昼に白み亘り、
物陰は常闇世界の烏羽玉いろを鏤めている。土は陽炎を立たさぬまでに熟燃している。空....
「鳥羽伏見の戦」より 著者:菊池寛
敷に庇護されていた。 十二月十八日、近藤が上京した帰途、伏見街道藤森に於て突如
物陰から狙撃され、その右肩に重傷を負った。むろん、伊東の残党の計画であるが、その....
「少年探偵長」より 著者:海野十三
らヘクザ館の周囲にむかって、機関銃の雨を降らせているのである。 「危い。みんな、
物陰にかくれろ」 一行七人、蜘蛛の巣を散らすがごとく、四方の壁にちると、カーテ....
「蒲生氏郷」より 著者:幸田露伴
ろが茶室に懸って居た韓退之の詩の句を需《もと》められるままに読み且つ講じたので、
物陰でそれを聞いた信長が感じて殺さずに終《しま》ったのである。詩の句は劇的伝説を....
「天馬」より 著者:金史良
ろとついて行く。 行列が通り過ぎてしまうと彼は又急に慌てて出口まで飛び出した。
物陰に息をひそめてどんよりとした目で眺めれば、それはもうひっそりとして遠くに消え....
「地球要塞」より 著者:海野十三
がたちこめ、咫尺《しせき》を弁じなかった。私はその暗黒海底を巧みに利用して、その
物陰から、敵の潜水艦に向って、一発の水中榴弾を撃ちだしたのであった。命中するか、....
「楢重雑筆」より 著者:小出楢重
いろいろと控えていて夏を楽しんでいる。 夏は天上陽気盛んであるが、この地上は万
物陰となる、冬は天上陰となるが我地上は陽気で満つるのだと、私はある老人から聞いた....
「死者の書」より 著者:折口信夫
日中の興奮で、皆は正体もなく寝た。身狭までが、姫の起き明す灯の明りを避けて、隅の
物陰に、深い鼾を立てはじめた。 郎女は、断れては織り、織っては断れ、手がだるくな....
「曽我の暴れん坊」より 著者:坂口安吾
だから、平六の女房は大喜びで下へもおかぬモテナシをしてくれるけれども、人のおらぬ
物陰で、十郎はしきりに口説かれる。十郎も閉口して、 「明日ここを出ようじゃないか....
「剣侠」より 著者:国枝史郎
束はしたけれど、気になったので見に来ると……」 「この騒動で驚いたか」 「それで
物陰にかくれていると、この夜廻りが六尺棒でお前の足を払おうとしたので……」 「飛....
「おみな」より 著者:坂口安吾
好きだったが、その話の嘘らしいのが私に甚だ悲しかった。私は七ツ八ツから庭の片隅の
物陰へひとりひそんで、見も知らぬふるさと長崎の夢を見るのが愉しかった。 私の子....
「好色破邪顕正」より 著者:小酒井不木
通りぬけ、隣りの屋敷にはいった。 お豊は、無言のまま先に立って、やがて、とある
物陰に康雄をつれて行った。 「何だい?」と、康雄は辛抱し切れなくなってたずねた。....