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物静か
「物静か〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
物静かの前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「奇怪な再会」より 著者:芥川竜之介
た。
竈《かまど》が幅をとった板の間には、障子《しょうじ》に映るランプの光が、
物静かな薄暗をつくっていた。婆さんはその薄暗の中に、半天《はんてん》の腰を屈《か....
「玉藻の前」より 著者:岡本綺堂
た。秋の日を浴びている翁の寂《さ》びたひたいにも皺の数が殖えていないらしかった。
物静かな山科郷の陶器師の家には、月日の移り変わりというものがないようにも思われた....
「婦系図」より 著者:泉鏡花
を待たせて、立附けの悪い門をあければ、女の足でも五歩は無い、直き正面の格子戸から
物静かに音ずれたが、あの調子なれば、話声は早や聞えそうなもの、と思う妹の声も響か....
「クララの出家」より 著者:有島武郎
を暗く彩って、それがクララの髪の毛に来てしめやかに戯れた。恐ろしいほどにあたりは
物静かだった。クララの燃える眼は命の綱のようにフランシスの眼にすがりついた。フラ....
「深夜の市長」より 著者:海野十三
トコトコと二階へ上っていった。 二階へ来てみると、これはまた世界が違ったように
物静かだった。廊下には赤と黒との模様のある絨毯がズッと敷きつめてあった。その上を....
「階段」より 著者:海野十三
まり高くはないが、色の白いせいか大理石の墓碑のように、すっきりした青年理学士で、
物静かな半面に多分の神経質がひそんでいるのが一と目で看守せられた。僕よりは四歳上....
「国際殺人団の崩壊」より 著者:海野十三
は我慢していただきたい。 古ぼけた大きな折鞄を小脇にかかえて、やや俯き加減に、
物静かな足どりをはこんでゆく紳士がある。茶色のソフト帽子の下に強度の近眼鏡があっ....
「爬虫館事件」より 著者:海野十三
万年筆はよく落すものではあるが、そんなに具合よく館の入口に落すものではない。また
物静かな園長が落すというのも可怪しい。鴨田が後に怪まれることを勘定に入れて落して....
「火葬国風景」より 著者:海野十三
来て、始めてあたりの閑寂な空気に気がついた。 八十助の座席の隣では、二人の男が
物静かな会話をつづけていたそれを聞くともなしに、彼は聴いた。 「……というわけで....
「霊界通信 小桜姫物語」より 著者:浅野和三郎
の何より好きな遊びの一つでございました。その時分の鎌倉は武家の住居の建ち並んだ、
物静かな、そして何やら無骨な市街で、商家と言っても、品物は皆奥深く仕舞い込んであ....
「花束の虫」より 著者:大阪圭吉
が又二人の訪問者には甚らなく痛々しげに思われた。こんな時誰でもが交す様なあの変に
物静かなお定りの挨拶が済むと、瞼をしばたたきながら、夫人は大月の問に促されて目撃....
「中支遊記」より 著者:上村松園
は知っている作家かとも思うが、少し遠いので落款をはっきり見ることが出来なかった。
物静かな、大柄な、青年のような汪主席はいまは日本にとっては多く親しまれた風貌であ....
「小坂部姫」より 著者:岡本綺堂
。」と、師直は声をかけた。 先刻とは人が違ったような、むしろ薄気味わるいほどに
物静かな、柔かい声で招かれて、侍従は少しためらったが、そばには小坂部が付いている....
「草木の暗示から」より 著者:小川未明
間生活を営むに為めになるということに過ぎないからです。 正直と善良とがあれば、
物静かな村の生活でも、虚偽と浮薄が風をなす、物質的文明で飾られた大都会の生活より....
「妖影」より 著者:大倉燁子
着いていた。 お嬢さんは手を動かすのさえ苦しそうで、見ていても痛々しい。極めて
物静かに少しの音もたてずに食事をしていた。始終伏目になっていて殆んど顔を上げない....