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牽く
「牽く〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
牽くの前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「富士」より 著者:岡本かの子
だわ。眷属中の良いところのものを一人で」と託《かこ》ったが、男のこころまでかくも
牽くということを聴くと、うらやましさが嵩じてなった嫉みは、更に毒を加えて燃えさせ....
「永日小品」より 著者:夏目漱石
来た。杖の先には光を帯びた鳥の羽《は》をふさふさと着けて、照る日に輝かした。縁に
牽く黄色い縞の、袖らしい裏が、銀のように光ったと思ったらこれも行き過ぎた。 す....
「水害雑録」より 著者:伊藤左千夫
その手配にかかった。人数が少くて数回にひくことは容易でない。二十頭の乳牛を二回に
牽くとすれば、十人の人を要するのである。雨の降るのにしかも大水の中を
牽くのである....
「中国怪奇小説集」より 著者:岡本綺堂
馬のたぐいを多く飼っていて、往来の役人や旅びとの車に故障を生じた場合には、それを
牽く馬匹を廉く売ってやるので、世間でも感心な女だと褒めていた。そんなわけで、旅を....
「十二支考」より 著者:南方熊楠
かせて乗ると類似して、ギリシアの日神ヘリオスは光と火を息《いき》する四の雪白馬が
牽く車に乗る(第六図)。第七図は、デンマーク国古青銅器時代の青銅製遺物で、馬が日....
「十二支考」より 著者:南方熊楠
《ゆる》せ、われその罪なくして慄《おのの》きながら死地に就くに忍びずと言う。牛を
牽く者、しからば鐘に血を塗るを廃しましょうかと問うと、それは廃すべからず、羊を以....
「おのずから低きに」より 著者:宮本百合子
にちぢめた生活には寂しさ、落寞たるものを感じ勝ちだろう。そのためにも、新聞小説の
牽く力は、一度それに皮膚を馴らされた作家にとって、決して侮りがたいものをもってい....
「九州の東海岸」より 著者:宮本百合子
石南花が今を盛りに咲いていた。海、砂、五月の空、互になかなか美しい、もう一本目を
牽く樹があった。すんなり枝を延ばし梢高く、樹肌がすべすべで薄紅のに、こちゃこちゃ....
「万葉秀歌」より 著者:斎藤茂吉
経験したことの無い朝川を渡ったというのは、実際の写生で、実質的であるのが人の心を
牽く。特に皇女が皇子に逢うために、秘かに朝川を渡ったというように想像すると、なお....
「わかれ」より 著者:国木田独歩
わたりの騎馬隊の兵士が踵に届く長剣を左手にさげて早足に巷を上りゆく、続いて駄馬|
牽く馬子が鼻歌おもしろく、茶店の娘に声かけられても返事せぬがおかしく、かなたに赤....
「慾」より 著者:豊島与志雄
だ。それになお、恋愛は一種の電気作用だというのも、真理かも知れない。それはただ相
牽く力だ。体質や気質による牽引力だ。然しともすると、一方だけが牽かれて、一方は何....
「人口論」より 著者:マルサストマス・ロバート
歳か十五歳と思われる男児が、聞いてみるとしばしば十八歳か十九歳である。そして鋤を
牽くのは確かに健康によい運動に違いないのに、この仕事をしている子供には脚にふくら....
「子規居士と余」より 著者:高浜虚子
俳句を鼓吹したことも二十六、七年からの事であったが、陣容が漸く整うて世人の注目を
牽くようになったのは実に此の『俳人蕪村』を以って始まると言っていいのである。それ....
「層雲峡より大雪山へ」より 著者:大町桂月
りぎりすの声左右に満つ。下愛別に至れば、小市街を成す。三人の幼児の乗りたる箱車を
牽く犬もあり。石狩川の水を引ける掘割の傍に宿屋ありけるが、小熊を鉄鎖にて木に繋げ....
「雪」より 著者:中谷宇吉郎
値が直ぐに分るのである。 もっともこれはほんの予備的の実験であって、実際は馬の
牽く力は一歩一歩毎に違うのである。それに或る雪質の場合には、雪が橇に凝着《ぎょう....