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「狭霧〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す

狭霧の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
或る女」より 著者:有島武郎
霧《ガス》が野火《のび》の煙のように濛々《もうもう》と南に走って、それが秋らしい狭霧《さぎり》となって、船体を包むかと思うと、たちまちからっと晴れた青空を船に残....
或る女」より 著者:有島武郎
ような静かな鄙《ひな》びた自然の姿が葉子の目の前には見渡された。まだ晴れきらない狭霧《さぎり》をこめた空気を通して、杉の葉越しにさしこむ朝の日の光が、雨にしっと....
富士」より 著者:岡本かの子
じ影像となって浮んで来た。 山処《やまと》の ひと本すゝぎ 朝雨《あささめ》の狭霧《さぎり》に将起《たゝん》ぞ 翁は身体を撫でながら愛に絶えないような声調....
東海道五十三次」より 著者:岡本かの子
。 まだ、戸の閉っている二軒のあべ川|餅屋《もちや》の前を通ると直ぐ川瀬の音に狭霧《さぎり》を立てて安倍川が流れている。轍《わだち》に踏まれて躍る橋板の上を曳....
闖入者」より 著者:大阪圭吉
かな、柔かな無数の起伏を広々と涯しもなく押し拡げて、彼方には箱根山が、今日もまた狭霧にすっぽりと包まれて、深々と眠っていた。 裏庭の広場からは、薪を割る安吉老....
雛妓」より 著者:岡本かの子
しいものに思い做して、うれしそうに病み死んだ。 風は止んだ。多摩川の川づらには狭霧が立ち籠め生あたたかくたそがれて来た。ほろほろと散る墓畔の桜。わたくしは逸作....
黒死館殺人事件」より 著者:小栗虫太郎
寂びれた斑を作りながら石面を蝕んでゆくように、いつとはなく、この館を包みはじめた狭霧のようなものがあった。そうして、やがては館全体を朧気な秘密の塊としか見せなく....
極楽」より 著者:菊池寛
方としては此の上の死に方はなかった。死んで行くおかん自身でさえ、段々消えて行く、狭霧のような取とめもない意識の中で、自分の往生の安らかさを、それとなく感じた位で....
人外魔境」より 著者:小栗虫太郎
婦人はいない。ただ、テムズを越えてみえるバタッシー公園の新芽の色が、四月はじめの狭霧にけむり、縹渺として美しい。 翌朝は、ロンドンの郊外クロイドンの飛行場。ア....
フランダースの犬」より 著者:菊池寛
とは、ネルロにとっては思いもよらぬことです。あかあかと燃える夕映の空、うっすらと狭霧の立ちこめる朝などに、遠くそびえるあの大寺院の尖塔は、ネルロの心と、おじいさ....
わかれ」より 著者:国木田独歩
年の目は遠く大空のかなたに向かえり。空は雨雲ひくく漂い、木の葉半ば落ち失せし林は狭霧をこめたり。 青年は童に別れ、独り流れに沿うて林を出で、水車場の庭に入れば....
光り合ういのち」より 著者:倉田百三
尾の山のあけぼのに 紅匂う花がすみ と私たちは声を揃えて校歌を唱う。 神秘の狭霧はなかなか晴れようとはせぬ。 やがて風が出て霧がちぎれ初めると紫色に染みな....
秋深き」より 著者:織田作之助
と思った。なにが解消なもんかと、なにか莫迦にされているような気がした。 いつか狭霧が晴れ、川音が陽の光をふるわせて、伝わって来た。女のいかつい肩に陽の光がしき....
フレップ・トリップ」より 著者:北原白秋
雨めかしい、燐のにおいの小雨である。 養狐場を出たところで、私はまた牛舎の白い狭霧を、厩舎や豚舎の小雨を見た。雫を含んだ鮮緑の広々とした牧草の平面を、また散在....
黒部川を遡る 」より 著者:木暮理太郎
いる。此主へ愛本村の平三郎という人の娘が嫁に入った。いよいよ淵に入る段になると、狭霧が水面を立ち罩めて、少しも様子が見られなかったという。娘は屡々里へお客に来た....