猪口[語句情報] » 猪口

「猪口〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す

猪口の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
奇怪な再会」より 著者:芥川竜之介
んにち》あるを得たのは、実際君のおかげだよ。」 牧野は太い腕を伸ばして、田宮へ猪口《ちょく》をさしつけた。 「そう云われると恐れ入るが、とにかくあの時は弱った....
魚河岸」より 著者:芥川竜之介
に、ちびちび正宗《まさむね》を嘗め始めた。勿論|下戸《げこ》の風中や保吉は二つと猪口《ちょく》は重ねなかった。その代り料理を平げさすと、二人とも中々《なかなか》....
星座」より 著者:有島武郎
ね》を答えて、ちょうど顔のところまで持ち上げて湯気の立つ黄金色を眺めていた、その猪口《ちょこ》に口をつけた。 「おぬいさんって可愛いい方ね」 そういうだろうと....
国貞えがく」より 著者:泉鏡花
ん》を掛けた桃桜《ももさくら》の壇の前に、小さな蒔絵《まきえ》の膳に並んで、この猪口《ちょこ》ほどな塗椀《ぬりわん》で、一緒に蜆《しじみ》の汁《つゆ》を替えた時....
婦系図」より 著者:泉鏡花
わ。ねえ、早瀬さん、さあ、めしあがれよ、ぐうと、」 「いいえ、もう、」 主税は猪口を視むるのみ。 「お察しなさいよ。」 と先生にまたお酌をして、 「御贔屓の....
田端日記」より 著者:芥川竜之介
からいやだよ。」と云って外へ出た。そうしたら、うしろで「いやあだ。」と云う声と、猪口の糸底ほどの唇を、反らせて見せるらしいけはいがした。 外濠線へ乗って、さっ....
草迷宮」より 著者:泉鏡花
針を顱鉄がわりに、手拭に畳込んで、うしろ顱巻なんぞして、非常な勢だったんですが、猪口の欠の踏抜きで、痛が甚い、お祟だ、と人に負さって帰りました。 その立廻りで....
歌行灯」より 著者:泉鏡花
今|此家の前を車が二台、旅の人を乗せて駈抜けたっけ、この町を、……」 と干した猪口で門を指して、 「二三町行った処で、左側の、屋根の大きそうな家へ着けたのが、....
第二菎蒻本」より 著者:泉鏡花
で、急な病気、と老人を持つ胸に応えた。 「敵の間諜じゃないか。」と座の右に居て、猪口を持ちながら、膝の上で、箇条を拾っていた当家の主人が、ト俯向いたままで云った....
開扉一妖帖」より 著者:泉鏡花
すらりとしたのが、小丼のもずくの傍で、海を飛出し、銀に光る、鰹の皮づくりで、静に猪口を傾けながら、 「おや、もう帰る。」信也氏が早急に席を出た時、つまの蓼を真青....
伊勢之巻」より 著者:泉鏡花
子は二本ばかり、早くから並んでいるのに。 赤福の餅の盆、煮染の皿も差置いたが、猪口も数を累ねず、食べるものも、かの神路山の杉箸を割ったばかり。 客は丁字形に....
白花の朝顔」より 著者:泉鏡花
車夫に振舞うたばかりですよ。」 「お毒見をいたします。」 お洲美さんが白い手で猪口を取った。 「注いで下さい。」 大人驚いた顔をして、 「飲むのかね。」 「....
河伯令嬢」より 著者:泉鏡花
。 免れられない……因縁です。」 小山夏吉は、半ば独言いて嘆息して、苦そうに猪口を乾した手がふるえた。 小山夏吉は寂く微笑んだ。 「ははは、泣くより笑で。....
式部小路」より 著者:泉鏡花
れて、むらむらと固る雲、額のあたりが暗くなった。 「ウイ、」 と押つけるように猪口を措いて、 「嬉しくねえ、嬉しくねえ、へん、馬鹿にしねえや。何でえ、」 と....
活人形」より 著者:泉鏡花
りもなお声細く、「ああ、これが現世の見納かなあ。得たりと医師は膝立直して、水薬を猪口に移し、「さあこれをお飲みなさい。と病人の口の端に持行けば、面を背けて飲まん....