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「猪牙〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す

猪牙の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
開化の良人」より 著者:芥川竜之介
当日は兼ねての約束通り柳橋の舟宿《ふなやど》で落合ってから、まだ月の出ない中に、猪牙舟《ちょきぶね》で大川へ漕ぎ出しました。 「あの頃の大川《おおかわ》の夕景色....
大川の水」より 著者:芥川竜之介
った時にも、大川は今のごとく、船宿の桟橋《さんばし》に、岸の青蘆《あおあし》に、猪牙船《ちょきぶね》の船腹にものういささやきをくり返していたのである。 ことに....
右門捕物帖」より 著者:佐々木味津三
は四月初め。――もう春も深い。 小唄《こうた》にも、浮かれ浮かれて大川を、下る猪牙《ちょき》船影淡く、水にうつろうえり足は、紅の色香もなんじゃやら、エエまあ憎....
街頭から見た新東京の裏面」より 著者:杉山萠円
ざわ》の心意気や浮世絵に残る網舟……遊山船、待乳《まつち》山の雪見船、吉原通いの猪牙船《ちょきぶね》……群れ飛ぶ都鳥……。 両国橋の上に立って、そうした行楽気....
夜明け前」より 著者:島崎藤村
何百艘で、一本マスト、二本マストの帆前船、または五大力の大船から、達磨船、土船、猪牙船なぞの小さなものに至るまで、あるいは動き、あるいは碇泊していた。その活気を....
大菩薩峠」より 著者:中里介山
も、中台にも、異常があるのではございませんが、南波止場《みなみはとば》のところの猪牙《ちょき》に動きがあるようですから、引返して、御殿の方と、それからお花畑を通....
銀三十枚」より 著者:国枝史郎
伯氏が、贋金と白金とを見分けぬはずはない。知っていて俺に借したのだ。しかしあんな猪牙がかりに、借せるような物じゃアないはずだが。金銭に直して幾万円? 箆棒めえ借....
江戸芸術論」より 著者:永井荷風
は甚しく驚愕《きょうがく》するが如きさまをなせり。然るに広重が画図《がと》中には猪牙《ちょき》を漕《こ》ぐ船頭も行先を急がぬらしく、馬上に笠を戴《いただ》く旅人....
銀座」より 著者:永井荷風
だ娘であった時分この辺《へん》から猿若町《さるわかちょう》の芝居見物に行くには、猪牙船《ちょきぶね》に重詰《じゅうづめ》の食事まで用意して、堀割から堀割をつたわ....
日和下駄」より 著者:永井荷風
きに水の流れを眺めている。閑雅《かんが》の趣|自《おのずか》ら画面に溢れ何となく猪牙舟《ちょきぶね》の艪声《ろせい》と鴎《かもめ》の鳴く音《ね》さえ聞き得るよう....
雪の日」より 著者:永井荷風
の一間に世をしのび、雪のふる日にも炭がなく、唯涙にくれている時、見知り顔の船頭が猪牙舟《ちょきぶね》を漕《こ》いで通るのを、窓の障子の破れ目から見て、それを呼留....
奥羽地方のシシ踊りと鹿供養」より 著者:喜田貞吉
なく、古代において各地鹿の多かった事は、石器時代の遺蹟に鹿角が多く包含せられて、猪牙の極めて少い事からでも想像せられ、記紀の記するところ、日本武尊の焼津の野火の....
」より 著者:岡本かの子
旧幕の頃、江戸|大通の中に数えられていた室子の家の先代は、この引き堀に自前持ちの猪牙船を繋いで深川や山谷へ通った。 室子の家の商品の鼈甲は始め、玳瑁と呼ばれて....
鼓の音」より 著者:田中貢太郎
田川の裾になった川面に微藍の色をした潮が中高にとろりと湛えて、客を乗せた一|艘の猪牙船が大川の方へ出ようとして、櫓の痕を泥絵の絵具のように一筋長く印しているのが....
春泥」より 著者:久保田万太郎
なく、自分からすゝんで上の役者たちの用を足した。それにはそれまでの稼業柄、すべて猪牙がゝりに気を軽く、いうことでも歯切がよく、何をさしても決してソツがなかったか....