»
甍
「甍〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
甍の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「偸盗」より 著者:芥川竜之介
、ただ、いつか月しろのした、うす明るい空にそむいて、羅生門《らしょうもん》の高い
甍《いらか》が、寂然《せきぜん》と大路を見おろしているばかり、またしてもほととぎ....
「羅生門」より 著者:芥川竜之介
をあつめて来る。夕闇は次第に空を低くして、見上げると、門の屋根が、斜につき出した
甍《いらか》の先に、重たくうす暗い雲を支えている。
どうにもならない事を、どう....
「春昼」より 著者:泉鏡花
だらけの顔に一杯の日当り、桃の花に影がさしたその色に対して、打向うその方の屋根の
甍は、白昼|青麦を※る空に高い。 「あの家のかね。」 「その二階のさ。」 「いん....
「天守物語」より 著者:泉鏡花
く。外面は山岳の遠見、秋の雲。壁に出入りの扉あり。鼓の緒の欄干|外、左の一方、棟
甍、並びに樹立の梢を見す。正面おなじく森々たる樹木の梢。 女童三人――合唱―― ....
「海神別荘」より 著者:泉鏡花
しなかろう。そして、貴女を船に送出す時、磯に倒れて悲しもうが、新しい白壁、艶ある
甍を、山際の月に照らさして、夥多の奴婢に取巻かせて、近頃呼入れた、若い妾に介抱さ....
「薬草取」より 著者:泉鏡花
取って床板を蹈んで出ると、小窓が一つ。それにも障子がないので、二人で覗くと、前の
甍は露が流れて、銀が溶けて走るよう。 月は山の端を放れて、半腹は暗いが、真珠を....
「伯爵の釵」より 著者:泉鏡花
森黒く、濠蒼く、国境の山岳は重畳として、湖を包み、海に沿い、橋と、坂と、辻の柳、
甍の浪の町を抱いた、北陸の都である。 一年、激しい旱魃のあった真夏の事。 …....
「みさごの鮨」より 著者:泉鏡花
、大きな(舎)という字をさながらに、湯煙の薄い胡粉でぼかして、月影に浮いていて、
甍の露も紫に凝るばかり、中空に冴えた月ながら、気の暖かさに朧である。そして裏に立....
「小春の狐」より 著者:泉鏡花
汰なのであった。 湖を遥に、一廓、彩色した竜の鱗のごとき、湯宿々々の、壁、柱、
甍を中に隔てて、いまは鉄鎚の音、謡の声も聞えないが、出崎の洲の端に、ぽッつりと、....
「陽炎座」より 著者:泉鏡花
こが歪みなりの角から、町幅を、一息、苗代形に幅の広くなった処があって、思いがけず
甍の堆い屋形が一軒。斜に中空をさして鯉の鱗の背を見るよう、電信柱に棟の霞んで聳え....
「南地心中」より 著者:泉鏡花
」 はじめて心付くと、先刻視めた城に対して、稜威は高し、宮居の屋根。雲に連なる
甍の棟は、玉を刻んだ峰である。 向って鳥居から町一筋、朝市の済んだあと、日蔽の....
「怨霊借用」より 著者:泉鏡花
さしい、そこの見晴しで、ちょっと下に待つ人を見ようと思ったが、上って来た方は、紅
甍奥の院、四十七町いろは道が見えて、向うの山の根を香都良川が光って流れる。わきへ....
「河伯令嬢」より 著者:泉鏡花
い。左が一段高く、そこの樹林の中を潜ると、並んではいますが棟が別で、落葉のままに
甍が見えます。階を上ると、成程、絵馬が沢山に、正面の明神の額の下に、格子にも、桟....
「活人形」より 著者:泉鏡花
に靄薄く、見ゆる限りの野も山も海も夕陽の茜に染みて、遠近の森の梢に並ぶ夥多寺院の
甍は眩く輝きぬ。処は相州東鎌倉雪の下村……番地の家は、昔|何某とかやいえりし大名....
「本所両国」より 著者:芥川竜之介
ポケット本の中にちゃんともう誰か書き尽している。――『玉敷きの都の中に、棟を並べ
甍を争へる、尊き卑しき人の住居は、代々を経てつきせぬものなれど、これをまことかと....