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甘たるい
「甘たるい〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
甘たるいの前後の文節・文章を表示しています。該当する12件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「或る女」より 著者:有島武郎
声はいつものように澄んではいなかった。そして気を許した女からばかり聞かれるような
甘たるい親しさがこもっていた。岡の肩は感激のために一入《ひとしお》震えた。頓《と....
「浮雲」より 著者:二葉亭四迷
喰付たいほど思えども……」と平気で鼻歌。 お勢はおそろしく顔を皺《しか》めて、
甘たるい声で、「よう、放して頂戴と云えばねえ……声を立てますよ」 「お立てなさい....
「斬られたさに」より 著者:夢野久作
見えていつの間にか陶然となった。 ……ハテ。主命というても今度は、お部屋向きの
甘たるい事ばかりじゃ。附け狙われるような筋合いは一つもないが……やはり最前の若侍....
「今日の作家と読者」より 著者:宮本百合子
いて、モーロアの多弁は些かも説明し得ない。終章のモラルも、ジェスチュアが目立って
甘たるい。 例えば、このひろく読まれた一冊の本をめぐって、今日の読者としての作....
「日本の秋色」より 著者:宮本百合子
るから。ヨーロッパ文化は、一方で、トルストイやストリンドベリーのように、そういう
甘たるい客間のしきたりに頑固に反撥した人々をもち、今日では、本質の異った社会連帯....
「婦人改造と高等教育」より 著者:与謝野晶子
ません。女の間に歓迎される種種の婦人雑誌などはいずれも女の感情に媚びて編輯された
甘たるい分子が多く、男の世界では既に常識になっているほどの科学的及び社会的知識す....
「小さき家の生活」より 著者:宮本百合子
うものは、確に自分に頭と一致しない矛盾を与えて居たと思う。 幸、性格的に自分は
甘たるい、つんとした、そして弱い生活を嫌う傾向を持って生れた。その為に、素朴な、....
「獄中への手紙」より 著者:宮本百合子
めにしてランゲを入れましょう。 『科学者と詩人』とは訳者の調子がわざわいしてやや
甘たるいところが過重せられていると信じるが面白うございます。序論を一二頁よんだだ....
「妻」より 著者:神西清
その世迷い言やぼそぼそ声に何か格別な秘かな意味を推測するときに見せる、あの柔和な
甘たるい殊勝げな色が浮かんでいる。私は妻の表情にも姿にも、何かしら精神病的な或い....
「梟の眼」より 著者:大倉燁子
もてだった。忽ち番組のカードは予約で一杯になった。 噎せかえるような強い香水、
甘たるい皮膚の香、柔らかそうな首筋、クリーム色のふっくりした胸、それ等は彼に何の....
「黒猫十三」より 著者:大倉燁子
はミミーを小脇に抱えて、自動車の窓に飛びついた。 「遅かったのねえ。お兄さん」と
甘たるい声を出して、 「昨夜、失敗したから、――今夜はミミーを伴れて行くのよ」と....
「それから」より 著者:夏目漱石
三千代が提げて這入て来た百合の花が、依然として洋卓《テーブル》の上に載っている。
甘たるい強い香《か》が二人の間に立ちつつあった。代助はこの重苦しい刺激を鼻の先に....