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甘み
「甘み〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
甘みの前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「カズイスチカ」より 著者:森鴎外
トル位の濃い帯緑黄色の汁が落ちている。花房はそれを舐《な》めさせられるのである。
甘みは微《かす》かで、苦みの勝ったこの茶をも、花房は翁の微笑と共に味わって、それ....
「金魚撩乱」より 著者:岡本かの子
ごとく張り、据り方にゆるぎのない頸つき、昔のように漂渺とした顔の唇には蜂蜜ほどの
甘みのある片笑いで、やや尻下りの大きな眼を正眼に煙らせて来た。眉だけは時代風に濃....
「播州平野」より 著者:宮本百合子
頃の呼びかたは、同じおばあちゃんにしても、ちゃんというところに小猫のからむような
甘みがあり、母の気質にとっては、そういう絡まりも快よいのであろうと思ってきいた。....
「渋谷家の始祖」より 著者:宮本百合子
然し、始め、彼の仕事が拒絶された理由を知らなかった時の正隆の失望は、寧ろ感傷的な
甘みをどこやらに漂わせたものであった。 正隆は、ほんとに落胆したのだ。ほんとに....
「孟買挿話」より 著者:吉行エイスケ
が契約の最期の営業を終えたときは夜も白々と明け渡っていたのです。人間というものは
甘みとか、苦しみとか臭さ、そういう性情が生活に適応して、そこに味いとか臭とか、或....
「青年」より 著者:森鴎外
しかし後悔と名づける程の苦い味を感じてはいないのである。 苦みはない。そんなら
甘みがあるかというに、それもない。あのとき一時発現した力の感じ、発揚の心状は、す....
「田舎」より 著者:プレヴォーマルセル
を求める色文では無い。しかしマドレエヌは現在の煩悶を遁《のが》れて、過去の記念の
甘みが味いたいと云う欲望をほのめかしている。男子の貞操を守っていない夫に対して、....
「百姓弥之助の話」より 著者:中里介山
好きであった、それに青いうちに莢《さや》ごともいで枝豆を食う様にして食べるとその
甘みとうまさは忘れられないものの一つであり、かつまた熟し立てをほうろく煎《い》り....
「獄中への手紙」より 著者:宮本百合子
ダンはバルザックをあの有名な仕事着《ガウン》姿で、ロダンらしく、すこし凄みすぎて
甘みぬきにしすぎて居ると思います。バルザックはああいう英雄ではないわ(ロダンのバ....
「昭和二年の二科会と美術院」より 著者:寺田寅彦
るようなわざとらしさを感じる。それかと言ってルノアルふうの風景小品にもルノアルの
甘みは出ていない。無気味さがある。少し色けを殺すとこの人の美しい素質が輝いて来る....
「田園の幻」より 著者:豊島与志雄
まるのであろう。 宗太郎が砂糖黍を二本かついで来た。まだ若くて、根本の方にしか
甘みはない。私がジャック・ナイフを出してやると、彼は砂糖黍を一節ずつ器用に切った....
「名古屋スケッチ」より 著者:小酒井不木
碁盤割、隅に目を持つ賤が女も、柔和で華奢でしやんとして、京の田舎の中国の、にがみ
甘みをこきまぜて、恋の重荷に乗せてやる伝馬町筋十八丁、其他町の数々を語り申さん聞....
「転向」より 著者:和辻哲郎
重荷に押しつぶされるような人間は、畢竟滅ぶべき運命を担っているのであった。忘却の
甘みに救われるような人間は、「生きた死骸」になるはずの頽廃者に過ぎなかった。潰滅....
「べんがら炬燵」より 著者:吉川英治
、酒が出ている。 甘党の赤埴源蔵、吉田忠左衛門、堀部老人、小野寺、間瀬の人々は
甘みぞれを飲んでいた。無言|居士の奥田孫太夫までが、今夜は、ひどくニコニコしてい....
「幼年時代」より 著者:室生犀星
零れるほど実ったり、美しい真赤なぐみの玉が塀のそとへ枝垂れ出したのや、青いけれど
甘みのある林檎、杏、雪国特有のすもも、毛桃などが実った。 私どもは殆んど公然と....