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「甘美〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す

甘美の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
冬の日」より 著者:梶井基次郎
》っていった。またそんな記憶がかつての自分にあったような、一種|訝《いぶ》かしい甘美な気持が堯を切なくした。 何ゆえそんな空想が起こって来るのか? 何ゆえその....
人造人間殺害事件」より 著者:海野十三
ん》であった。焼け鉄の酸《す》っぱい匂いにも、機械油の腐りかかった悪臭にも、僕は甘美《かんび》な興奮を唆《そそ》られるのであった。特務機関をつとめる僕にとっては....
深夜の市長」より 著者:海野十三
かされかけた。しかしその刹那、僕は勤め先の首尾のことばかりが気になった。どうやら甘美な雰囲気に一歩を踏みこんだものの、その甘美な味が感ぜられれば感じられるほど、....
階段」より 著者:海野十三
滲んでいて、化粧料から来るのか、それとも女史の体臭から来るのか、とに角も不思議に甘美を唆る香りが僕の鼻をうったものだから、思わず僕は眩暈を感じて頭へ手をやった。....
渾沌未分」より 著者:岡本かの子
匍いになった塚の熱砂の熱さとが、小初の肉体を上下から挟んで、いおうようない苦痛の甘美に、小初を陥れる。小初は、「がったん、すっとこ、がったん、すっとこ」そういい....
河明り」より 著者:岡本かの子
ように飛沫を散らして逆巻き亘っている。徒らな豪奢のうすら冷い触覚と、着物に対する甘美な魅惑とが引き浪のあとに残る潮の響鳴のように、私の女ごころを衝つ。 開かれ....
世界怪談名作集」より 著者:岡本綺堂
彼女は頭痛がすると言い出した。 「なァに、ちょっとした神経性の頭痛でしょう。この甘美な、詩人の飲料(シャンパン酒)の泡のなかでぶくぶくいっている快活なたましいほ....
あるニュウ・フェイスへの手紙」より 著者:岸田国士
フの文体に至っては、韻文詩劇として、古今稀にみる奇想と名調子とに満ち満ちている。甘美にすぎて、悪趣味に陥らず、滑稽をねらって軽きに失しない程のよさは、フランス人....
山越しの阿弥陀像の画因」より 著者:折口信夫
ことが出来るのではないかと思う。 大串純夫さんに、来迎芸術論(国華)と言う極めて甘美な暗示に富んだ論文があって、この稿の中途に、当麻寺の松村実照師に示されて、は....
バットクラス」より 著者:岡本かの子
してさえ容易に崩壊することを許さない。かくて、スワンソン夫人の生活はいつも平和で甘美で退屈だ。 今、繻子の寝床の介殻から抜けたスワンソン夫人の肉体は軽い空気の....
私の洋画経歴」より 著者:小野佐世男
った。つぼみが春の風にさすられて、少しづつ開かんとする感傷的な少年の胸には、この甘美な抒情詩のような美しい恋物語りが、まるで優しく胸をふくらましてくれたのである....
「日本民族」とは何ぞや」より 著者:喜田貞吉
うところではない。斉しく温州蜜柑を以てこれに接木したならば、ことごとく温州蜜柑の甘美な果実を結ぶ。その培養の方法や、台木の性質や、気候の異同等によって、果実に多....
」より 著者:カフカフランツ
て、栓を廻して開け、匂いをかいでみた。思わず微笑しないではいられなかった。匂いは甘美で、媚びるようであった。まるで、大好きな人から賞め言葉や親切な言葉を聞かされ....
エリザベスとエセックス」より 著者:片岡鉄兵
うなわけのものでもなかった。それとはまるで違う。男たちのきらびやかな姿から受ける甘美な煽情で彼女はいつもいっぱいだった。レスターに対する彼女の情熱は、彼といっし....
中世の文学伝統」より 著者:風巻景次郎
な共感を、桜花や月光の織りなす情緒的な自然へ、そのまま流れこませ、想いうるかぎり甘美な気分の羅を織りなすために、その生活をまもる人たちを描くのである。まことにこ....