甘酸[語句情報] » 甘酸

「甘酸〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す

甘酸の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
苦力頭の表情」より 著者:里村欣三
陽はまだ高かった。 俺は放浪の自由を感じて、女の胸に顔をうずめて、やわ肌の甘酸ぽい匂いを貪った。 顔をあげると、女は何か言ってひどく笑いくずれた。俺はキ....
赤耀館事件の真相」より 著者:海野十三
水を与えました。何もしらぬ夫人は、灼けつくような渇きを医すため、夢中になってその甘酸っぱい水をゴクリと咽喉にとおしたとき、青酸加里のカプセルは笛吹川の口を離れて....
河明り」より 著者:岡本かの子
色の肌から涙のような露を垂らした。柿の型をした紫の殻を裂くと、綿の花のような房が甘酸く唇に触れるマンゴスチンも珍らしかった。 「ドリアンがあると、こっちへいらっ....
黄鳥の嘆き」より 著者:甲賀三郎
彼の側にいた乳母を忘れはしなかったろう。時々は思出したに違いない。そうして過去の甘酸ぱい思出に耽った事であろう。然し、恐らく一回だって、真実の母として考えた事は....
白峰山脈縦断記」より 著者:小島烏水
たが、濃い透明の空は、硝子で張り詰めたようだ、黄色の日光が、黄花石楠花を蒸して、甘酸ッぱいような、鼻神経をそそるような匂いとも色ともつかないのが、眼から鼻へと抜....
谷より峰へ峰より谷へ」より 著者:小島烏水
は、黄花の石楠花が、ちらほら咲いている、この花の弁で承けた霧の雫を吸ったときは、甘酸っぱい香気で、胸が透いた。 岩壁は次第に薄い刃となり、擦り切れて、尖ってい....
宇宙戦隊」より 著者:海野十三
。そこで皮をむいた。ぷうんと蜜柑の香りがした。一房ちぎって口の中へほうりこんだ。甘酸っぱい汁――たしかに地上でおなじみの蜜柑にちがいなかった。しかもこの味は四国....
酒ぎらい」より 著者:太宰治
ある。台所の隅に、その一升瓶があるばっかりに、この狭い家全体が、どろりと濁って、甘酸っぱい、へんな匂いさえ感じられ、なんだか、うしろ暗い思いなのである。家の西北....
葉桜と魔笛」より 著者:太宰治
なおのこと妹が可哀そうで、いろいろ奇怪な空想も浮んで、私自身、胸がうずくような、甘酸っぱい、それは、いやな切ない思いで、あのような苦しみは、年ごろの女のひとでな....
次郎物語」より 著者:下村湖人
っ。」 運平老はもう一度大きく笑った。 俊亮も微笑した。しかし彼は、鼻の奥に甘酸っぱいものを感じて、眼を伏せたままだった。 運平老は、それから、襖の向こう....
光は影を」より 著者:岸田国士
へんから、彼の気持は、ぐらつきはじめた。この種の誘惑には、どこか熟しきつた果実の甘酸つぱい香りに似たようなものがある。彼の道徳が、これを拒む理由はすこしもない。....
暗夜の格闘」より 著者:小酒井不木
早速とび起きて、工場の扉をあけて見ると、中は真っ暗であったが、妙な鼻をつくような甘酸いような臭いがしたので、はっと思って電灯をつけると、驚いたことに助手の竹内さ....
岡ふぐ談」より 著者:佐藤垢石
、おしやます鍋見参ということにし給え。 本草綱目を繙いてみると、猫肉はその味、甘酸にして無毒とあって、食法が書いてない。倭本草には猫性を指して、気盛んなるとき....
」より 著者:犬田卯
た、生漬の梅だの、腐れかけた李だのを、うんとこ食べていた」と白髪の村医は笑った。甘酸っぱいような水薬をつくって、その飲み方や、病児の扱い方などを細々と説明して、....
宝永噴火」より 著者:岡本かの子
は直ぐに取戻されては来ない。錐を引いたと同時に去って行く痛みの尾のいおうようない甘酸っぱいひりひりした感覚の中に、うっかり閃いて来る心象は橘屋の娘のことでなけれ....