生温い[語句情報] » 生温い

「生温い〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す

生温いの前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
青春の逆説」より 著者:織田作之助
っと自分ひとりの胸に秘めて置けぬほどだった。気候も良かった。桜の花も咲き初めて、生温い風が吹くのである。豹一はまるで口笛でも鳴らしたい気持で、白紙の答案を想い出....
眉かくしの霊」より 著者:泉鏡花
したけれども、娘なんぞ寄っても着かない、……ばかりでない。この霜夜に、出しがらの生温い渋茶一杯|汲んだきりで、お夜食ともお飯とも言い出さぬ。座敷は立派で卓は紫檀....
赤耀館事件の真相」より 著者:海野十三
を床の上になげ落しました。 勝見は、恐る恐る笛吹川画伯の身体にふれて見ました。生温い体温を掌に感じて、いやな気持になりました。息は止っています。手首をとりあげ....
地中魔」より 著者:海野十三
下っていった。およそ四五メートルも下ったときのことだった。突然に彼の頬を、一陣の生温い風が、スーッと撫でた。 「おやッ」 袋の鼠か? (なんだろう?) ....
蠅男」より 著者:海野十三
宣告されたとある。 その殺人犯の糊本が刑死すると、塩田検事正の取計いで彼のまだ生温い屍体はドクトル鴨下の待っていた寝台自動車のなかに搬びいれられた。 糊本は....
恭三の父」より 著者:加能作次郎
た。炉縁の角の所に端書と手紙とが載って居た。恭三は立膝のまゝでそれを手に取った。生温い灰の香が鼻についた。蚊が二三羽耳の傍で呻った。恭三は焦立った気持になった。....
少年と海」より 著者:加能作次郎
飛んで来て、岬の端に啼きながら群れ飛んでいました。ずっと沖の方が黝んで来ました。生温い風が一陣さっと為吉の顔をなでました。 一心に沖を見ていた為吉は、ふと心づ....
江戸か東京か」より 著者:淡島寒月
多に飲まれない、町では「ひやっこい/\」といって、水を売ったものです。水道の水は生温いというので、掘井戸の水を売ったので、荷の前には、白玉と三盆白砂糖とを出して....
陽炎座」より 著者:泉鏡花
に晃々ときょろつかす。 幕の蔭と思う絵の裏で、誰とも知らず、静まった藤の房に、生温い風の染む気勢で、 「……紅蓮、大紅蓮、紅蓮、大紅蓮……」と後見をつけたもの....
大捕物仙人壺」より 著者:国枝史郎
い払おうと云うのであった。 鼬の芸当が人気を呼んでこの一座は評判が可かった。で生温い干渉では、引き払って行きそうには思われなかった。それに時代が幕末で、諸方に....
仇討姉妹笠」より 著者:国枝史郎
―でもようやく元気を取り戻すと、 「生き返ったのよ、業が深いからのう。……あんな生温い締め方では……」 「そうか、それじゃアもう一度」 あやめの手が素早く内懐....
馬妖記」より 著者:岡本綺堂
ぎる頃から城下の村へ忍んで行くと、お誂えむきの暗い夜で、今にも雨を運んで来そうな生温い南風が彼らの頬をなでて通った。城下であるから附近の地理はふだんからよく知っ....
坑鬼」より 著者:大阪圭吉
すっかり剥ぎ取られると、技師は閂を跳ね上げて、力まかせに鉄扉を引き開いた。異様な生温い風が闇の中から流れて来た。二人は薄暗い安全燈の光を差出すようにしながら、開....
黒猫十三」より 著者:大倉燁子
「肝心の書類は銀行の金庫に納ってあるんですとさ。――これから皆で銀行へ行くのよ」生温い息が耳にくすぐったかった。 本庄は帽子を眼深に被り助手台に腰を掛けている....
戦争史大観」より 著者:石原莞爾
王覇両文明の争いとなるものと信ずる。我ら東洋人は科学文明に遅れ、西洋人に比し誠に生温い生活をして来た。しかし反面常に天意に恭順ならんとする生活を続けたのである。....