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疾うの昔
「疾うの昔〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
疾うの昔の前後の文節・文章を表示しています。該当する13件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「縮図」より 著者:徳田秋声
均平は芝居や小説にある花柳|情緒の感傷的な甘やかしさ美しさに触れるには、情感も
疾うの昔しに乾ききり、むしろ生まれつき醜悪な心情の持主でさえあったが、二人の愛慾....
「踊る地平線」より 著者:谷譲次
家へ、私宛に倫敦の下宿から厚い封書が届いている。シベリア経由だから私たちより先に
疾うの昔に着いたのだ。莫迦に重要めいてるが何だろうと思って開けてみると、出発の時....
「踊る地平線」より 著者:谷譲次
であり、ふらんす人は未だに Paris, France の気でいるが、ほんとは
疾うの昔に Paris, Bohemia になってる「私の巴里」――もん・ぱり!....
「踊る地平線」より 著者:谷譲次
い。私もこの切符のため数日来東奔西走したが、かなり前から発売してるにかかわらず、
疾うの昔に売り切れちまって、市内の切符売場を廻ってみると、二十五ペセタの日蔭券が....
「植物人間」より 著者:蘭郁二郎
うな無気味さを覚えた。これが彼女とは逆に、この男に先に逢っていたのならば、川島は
疾うの昔に崖を駈|上ってこの地図にない沼のほとりから退散していたに違いないのだ。....
「生きている戦死者」より 著者:牧逸馬
時、大戦である。何もかも放擲された。 一九一六年、五月。Bela Kiss は
疾うの昔に腹部の貫銃創で、ベルグラアド野戦病院で死んでいる。 匈牙利に石油が少....
「おせん」より 著者:邦枝完二
せんを途中に押ッ取りかこんだ多勢は、飴屋の土平があっ気に取られていることなんぞ、
疾うの昔に忘れたように、我れ先にと、夕ぐれ時のあたりの暗さを幸いにして、鼻から先....
「父」より 著者:矢田津世子
が付いて厭な気分になった。自分の中に母をみたと思ったからである。そして、この母は
疾うの昔から自分の中に生きていたように考えられてくる。すると、自分の中の母に気付....
「明治劇談 ランプの下にて」より 著者:岡本綺堂
いような、惨めったいような、いやな感情を誘い出されたものであったが、そんなことは
疾うの昔の夢となってしまった。今日、劇場内の食堂で旨い物を食おうなどと考える人が....
「特殊部落の成立沿革を略叙してその解放に及ぶ」より 著者:喜田貞吉
人だからとて、決して卑しい者でも何でもありませぬ。その早く農業に従事したものは、
疾うの昔に公民になっているのであります。ただその中に山間|僻陬の地に居ったり、そ....
「情鬼」より 著者:大倉燁子
田切さんとの関係は彼がこの世を去る最後の日までずっと続いていたのでした。世間では
疾うの昔、二人の縁は断れたものと思っていたでしょうが、そう思わせるように仕向けた....
「深夜の客」より 著者:大倉燁子
しましょう」 「なに、要点だけを承わればよろしいんですよ」 「その死刑囚も、もう
疾うの昔、発狂し、自殺を遂げてしまいました」と云って、尾越は少時瞑目した。やがて....
「早稲田神楽坂」より 著者:加能作次郎
うに聞え、蛍の飛び交うのが見えたりしたものだったが、そうした旧時のおもかげなどは
疾うの昔に跡方もなく、今は一面にぎっしり家が建て詰まり、すっかり見違えてしまった....