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盥
「盥〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
盥の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「奇怪な再会」より 著者:芥川竜之介
》えながら、顔を洗いに縁側《えんがわ》へ行った。縁側にはもういつもの通り、銅の耳
盥《みみだらい》に湯を汲んだのが、鉢前《はちまえ》の前に置いてあった。
冬枯《....
「或る女」より 著者:有島武郎
うとした。
四十格好の克明《こくめい》らしい内儀《かみ》さんがわが事のように金
盥《かなだらい》に水を移して持って来てくれた。葉子はそれで白粉気《おしろいけ》の....
「小さき者へ」より 著者:有島武郎
うしゅ》葡萄酒といっていた。看護婦がそれを持って来た。産婆は顔と言葉とでその酒を
盥《たらい》の中にあけろと命じた。激しい芳芬《ほうふん》と同時に
盥の湯は血のよう....
「星座」より 著者:有島武郎
ねるようだが、何一つ口を出さない。そして土間の隅で洗いものなどをしながら、鼻水を
盥《たらい》に垂らして、大急ぎですすり上げたりしていた。
「けれどもだ、何をいう....
「婦系図」より 著者:泉鏡花
房楊枝を持添えて、袴を取ったばかり、くびれるほど固く巻いた扱帯に手拭を挟んで、金
盥をがらん、と提げて、黒塗に萌葱の綿天の緒の立った、歯の曲った、女中の台所|穿を....
「江戸か東京か」より 著者:淡島寒月
便桶が並んであるなど、乱暴なものだ。また並び床といって、三十軒も床屋があって、鬢
盥を控えてやっているのは、江戸絵にある通りです。この辺の、のでん賭博というのは、....
「伯爵の釵」より 著者:泉鏡花
は、口にするも暑くるしい。が、――諺に、火事の折から土蔵の焼けるのを防ぐのに、大
盥に満々と水を湛え、蝋燭に灯を点じたのをその中に立てて目塗をすると、壁を透して煙....
「売色鴨南蛮」より 著者:泉鏡花
慎むべき境遇を頷きながら、お妾に剃刀を借りて戻る。…… 「おっと!……ついでに金
盥……気を利かして、気を利かして。」 この間に、いま何か話があったと見える。 ....
「歌行灯」より 著者:泉鏡花
ヤ、あの騒ぎわい。」 と鼻の下を長くして、土間|越の隣室へ傾き、 「豪いぞ、金
盥まで持ち出いたわ、人間は皆裾が天井へ宙乗りして、畳を皿小鉢が躍るそうな。おおお....
「灯明之巻」より 著者:泉鏡花
な素質であるほど、ついその訛がお誓にうつる。 浅草寺の天井の絵の天人が、蓮華の
盥で、肌脱ぎの化粧をしながら、「こウ雲助どう、こんたア、きょう下界へでさっしゃる....
「春昼後刻」より 著者:泉鏡花
とえに嬰児になった、白光は頭を撫で、緑波は胸を抱いた。何らの寵児ぞ、天地の大きな
盥で産湯を浴びるよ。 散策子はむくと起きて、ひそかにその幸福を祝するのであった....
「河伯令嬢」より 著者:泉鏡花
っても、中庭の縁に添って咲いていたと申しましたっけ。 ――杜若の花を小褄に、欠
盥で洗濯をしている、束ね髪で、窶々しいが、(その姿のゆうにやさしく、色の清げに美....
「式部小路」より 著者:泉鏡花
ない若い男が、影のように立っていました。 で、することは看護ですな。昇汞水の金
盥と並べた、室外の壁の際の大きな器に、氷嚢から氷が溶けたのを、どくどくと開けてい....
「註文帳」より 著者:泉鏡花
、胞衣かと怪まれる帽を冠って、手拭を首に巻き、引出し附のがたがた箱と、海鼠形の小
盥、もう一ツ小
盥を累ねたのを両方振分にして天秤で担いだ、六十ばかりの親仁、瘠さら....
「ピストルの使い方」より 著者:泉鏡花
挨拶をなすったのに、貴いお上人さんの前にさ――」 「おちかさん。」 多津吉は、
盥のごとき鉄鉢を片手に、片手を雲に印象した、銅像の大きな顔の、でっぷりした頤の真....