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「真向き〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す

真向きの前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
婦系図」より 著者:泉鏡花
薄化粧さえしているのである。 お蔦は恥じてか、見て欲かったか、肩を捻って、髷を真向きに、毛筋も透通るような頸を向けて、なだらかに掛けた小掻巻の膝の辺に、一波打....
渾沌未分」より 著者:岡本かの子
、小初の顔立ちを引締まらせた。小初がずっと端麗に見える。その威厳がかえって貝原を真向きにさせた。貝原は悪びれず、 「相当な年配の男のいうことですから、あなたも本....
母子叙情」より 著者:岡本かの子
込んでしまったあとの、放漫なかの女の皮膚は、単純に反射的になっていて、湿気た風を真向きに顔へ当てることを嫌う理由だけでも、かの女にこんな動き方をさせた。 本能....
カール・マルクスとその夫人」より 著者:宮本百合子
き、媚びるところの一つもない口元を真面目に閉じているイエニーの顔つきには、人生と真向きに立っている妻の毅然とした力が感じられる。 この写真はいつ何処でとられた....
陽炎座」より 著者:泉鏡花
羽織に、ショオルを前結び。またそれが、人形に着せたように、しっくりと姿に合って、真向きに直った顔を見よ。 「いいえ、私はお稲です。」 紳士は、射られたように、....
巴里祭」より 著者:岡本かの子
濡れた指を手首に挟んだハンカチで拭くとその手をずっと伸して新吉の顎にかけて自分に真向きに向かせる。 ――さあ、そんな他所事ばかり言ってないでもう仰しゃいな。なぜ....
大菩薩峠」より 著者:中里介山
ている ベートーベンの 第三シムフォニーが 大好きであります…… と、海の方へ真向きに向って、半ばは独語の如く、半ばは演説の如く叫び出したのが、尋常の声ではあ....
大菩薩峠」より 著者:中里介山
寺通りの四角《よつかど》へ来て、火の番の拍子木を聞くと急に右へ折れて花岡の方へと真向きに行く――ここをふらっと行き尽せば灘田圃《なだたんぼ》だ。 だが、なにが....
大菩薩峠」より 著者:中里介山
の面《かお》を、まともに見つめました。睨《にら》むのと同様です。さすがの米友も、真向きに見られて、まぶしいような、テレ臭いような、小癪《こしゃく》にさわるような....
大菩薩峠」より 著者:中里介山
、それから程遠からぬ小さな池の傍の低地に小屋を営んで、その小屋の前に人間が一人、真向きに太陽の光を浴びて本を読んでいる。黒い洋服をいっぱいに着込んでいるから、そ....
獄中への手紙」より 著者:宮本百合子
、出版)非常に感動しました。阿知の知性を又いうが、知性とか人間性とかは、こういう真向きの暖いものもある筈です。ねえ、数学というものを万人のためのものにしようとい....
巴里のキャフェ」より 著者:岡本かの子
る。後向き、好き。少し横向き、少し好き。真横、好かない。七分身、やはり少し。では真向きの全身――椅子を直すふりして女客は立ち上った。が、真向きの一番広い鏡面は表....
稚子法師」より 著者:国枝史郎
た足健康の従者が高く振りかざす松火の光で、崎嶇たる山骨を僅に照らし、人馬物言わず真向きに走る。 「殿のお命に別状無い中どうぞ福島へ行きつきたいものだ」 この事....
或る秋の紫式部」より 著者:岡本かの子
紫式部 三十一二歳 老侍女 妙な美男 西向く聖 (舞台正面、質素な西の対屋の真向き、秋草の生い茂れる庭に臨んでいる。その庭を囲んで矩形に築地垣が廻らされてい....
唇草」より 著者:岡本かの子
手首の痛みがゆるめられて来ると、千代重はただなつかしい世界に浮き上り、自分の唇の真向きの位置に、少し盛り上った栖子の唇が意識された。 生身の唇と唇とは、互いに....