矢声[語句情報] »
矢声
「矢声〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
矢声の前後の文節・文章を表示しています。該当する14件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「生まれいずる悩み」より 著者:有島武郎
を感じて、君は「さあ来い」と言わんばかりに、艪をひしげるほど押しつかんだ。そして
矢声をかけながら漕ぎ始めた。涙があとからあとからと君の頬を伝って流れた。 唖の....
「旗本退屈男」より 著者:佐々木味津三
時です。凄惨と言うか、悲惨というか、浅ましさおぞましさ言いようがない。わッと言う
矢声もろ共、犇めきわめきながら殺到すると、押しのけはねのけ、揉み合いへし合いなが....
「名娼満月」より 著者:夢野久作
ロと音のせぬように抜き放ち、和尚の背中のマン中あたりにシッカリと切先を狙い付け、
矢声もろとも諸手突きに、柄も透れと突込めば、何かはもってたまるべき、悪獣のような....
「海の使者」より 著者:泉鏡花
。 (さっ、さっ、さっ、 しゅっ、しゅっ、しゅっ、 エイさ、エイさ!) と
矢声を懸けて、潮を射て駈けるがごとく、水の声が聞きなさるる。と見ると、竜宮の松火....
「白金之絵図」より 著者:泉鏡花
かかって、あわれ与五郎、でんぐりかえしを打った時、 「や、」と倒れながら、激しい
矢声を、掛けるが響くと、宙で撓めて、とんぼを切って、ひらりと翻った。古今の手練、....
「開扉一妖帖」より 著者:泉鏡花
か、朝酒を煽りつけた勢で、通しの夜汽車で、疲れたのを顧みず――時も八月、極暑に、
矢声を掛けて駆昇った事がある。…… 呼吸が切れ、目が眩むと、あたかも三つ目と想....
「薄紅梅」より 著者:泉鏡花
坂を乗下ろし、三崎|町の原を切って、水道橋から壱岐殿坂へ、ありゃありゃと、俥夫と
矢声を合わせ、切通あたりになると、社中随一のハイカラで、鼻めがねを掛けている、中....
「大菩薩峠」より 著者:中里介山
古式の通り捨鞭《すてむち》の扇であります。 策《むち》を揚げて馬を乗り飛ばし、
矢声をかけて、弓を引き絞って放つと過《あやま》たず、一の的、二の的、三の的を見事....
「枯菊の影」より 著者:寺田寅彦
しんとして寝ているような心持である。表の通りでは砂利をかんで勢いよく駈ける人車の
矢声も聞える。晴れきった空からは、かすかな、そして長閑な世間のどよめきが聞えて来....
「日置流系図」より 著者:国枝史郎
弓屋敷の不思議の噂は間もなく江戸中に拡がった。本所七不思議はさらに一つ「弓屋敷の
矢声」の怪を加えて本所八不思議と云われるようになった。弓道自慢の幾人かの武士は自....
「弓道中祖伝」より 著者:国枝史郎
法ト謂フ! 正次の射法はこれであった。満を持してしばらくもたせたが「曳!」という
矢声! さながら裂帛! 同時に鷲鳥の嘯くような、鏑の鳴音響き渡ったが、源三位頼政....
「少年連盟」より 著者:佐藤紅緑
に、かれの神経はつりあいを失いねらいを正確に定めることができなかった。 かれは
矢声をはなって輪を投げた、輪はくるくると旋回して棒の頭にはまらんとしてかすかにさ....
「二葉亭四迷の一生」より 著者:内田魯庵
。が、二葉亭の文学というは満身に力瘤を入れて大上段に振りかぶる真剣勝負であって、
矢声ばかりを壮んにする小手先剣術の見せ物試合でなかったから、美妙や紅葉と共に轡を....
「宮本武蔵」より 著者:吉川英治
ならば」 と、両手に握った鉄砲を示し、 「御免」 といったかと思うと、遽に、
矢声をかけて、その二挺をぶんぶんと振り廻した。 凄まじい風が座に起って、武蔵の....