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矢絣
「矢絣〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
矢絣の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「花火」より 著者:太宰治
恐ろしい不安もあった。二、三度、母に対して苦しい言いのがれをした事もあった。 「
矢絣《やがすり》の銘仙《めいせん》があったじゃないか。あれを着たら、どうだい?」....
「彼は昔の彼ならず」より 著者:太宰治
白い頭髪を短く角刈にして、気品があった。妹は二十歳前後の小柄な痩《や》せた女で、
矢絣《やがすり》模様の銘仙《めいせん》を好んで着ていた。あんな家庭を、つつましや....
「婦系図」より 著者:泉鏡花
、かえって夢かと思うよう、恍惚となったも道理。 看護婦の白衣にかさなって、紫の
矢絣の、色の薄いが鮮麗に、朱緞子に銀と観世水のやや幅細な帯を胸高に、緋鹿子の背負....
「妖術」より 著者:泉鏡花
だのではなく、その扇子を、一息探く挿込んだらしかった。 五 紫の
矢絣に箱迫の銀のぴらぴらというなら知らず、闇桜とか聞く、暗いなかにフト忘れたよう....
「吉原新話」より 著者:泉鏡花
覗く尼も出れば、藪に蹲む癖の下女も出た。米屋の縄暖簾を擦れ擦れに消える蒼い女房、
矢絣の膝ばかりで掻巻の上から圧す、顔の見えない番町のお嬢さん。干すと窄まる木場辺....
「支倉事件」より 著者:甲賀三郎
色は紫か濃い鼠か判然しません。帯の巾は男帯より少し広いので五、六寸位と思います。
矢絣の単衣の着物であったかも知れません。 古我判事は中田かまを退廷させると、貞....
「田舎教師」より 著者:田山花袋
業式に晴衣を着飾ってくる女生徒の群れの中にもかれの好きな少女が三四人あった。紫の
矢絣の衣服に海老茶の袴をはいてくる子が中でも一番眼に残っている。その子は町はずれ....
「うつり香」より 著者:近松秋江
座をかいていた柳沢の顔を見て燥いだように笑いかかった。 いつもよく例の小豆色の
矢絣のお召の着物に、濃い藍鼠に薄く茶のしっぽうつなぎを織り出したお召の羽織を着て....
「姥捨」より 著者:太宰治
にむすんで、下駄だけは、白く新しかった。妻にもコオトがなかった。羽織も着物も同じ
矢絣模様の銘仙で、うすあかい外国製の布切のショオルが、不似合いに大きくその上半身....
「別れたる妻に送る手紙」より 著者:近松秋江
茶糸で七宝繋ぎを織り出した例のお召の羽織に矢張り之れもお召の沈んだ小豆色の派手な
矢絣の薄綿を着ていた。 深夜の、朧に霞んだ電灯の微光の下に、私は、それを、何も....
「海水浴」より 著者:寺田寅彦
チがある。鍔広の藁帽を阿弥陀に冠ってあちら向いて左の手で欄の横木を押さえている。
矢絣らしい着物に扱帯を巻いた端を後ろに垂らしている、その帯だけを赤鉛筆で塗ってあ....
「兄妹」より 著者:岡本かの子
――二十余年前の春 兄は第一高等学校の制帽をかぶっていた。上質の久留米絣の羽織と着物がきちんと揃っていた。妹は紫
矢絣の着物に、藤紫の被布を着ていた。 三月の末、雲雀が野の彼処に声を落し、太陽....
「瓜の涙」より 著者:泉鏡花
た唇の、やや寂しいのが品がよく、鼻筋が忘れたように隆い。 縞目は、よく分らぬ、
矢絣ではあるまい、濃い藤色の腰に、赤い帯を胸高にした、とばかりで袖を覚えぬ、筒袖....
「春心」より 著者:田中貢太郎
人の少女が右側の生垣のある家から出て来たところであった。少女だちは同じように紫の
矢絣の袖の長い衣服を被ていた。広巳は知らない女の児のことであるから、他の人を呼ん....
「鉄の処女」より 著者:大倉燁子
流行というものは再び戻って来るものでしょう。私の目に残っている智恵子はよく藤色|
矢絣のお召の着物を着ていました。それがまたよく似合いました。前髪を眉の上まで切り....