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秋雨
「秋雨〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
秋雨の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「或る女」より 著者:有島武郎
子はうつむいてしまった。日はいつのまにかとっぷりと暮れていた。じめじめと降り続く
秋雨に湿《しと》った夜風が細々と通《かよ》って来て、湿気でたるんだ障子紙をそっと....
「半七捕物帳」より 著者:岡本綺堂
矢場七という二人が、自分らの友達を嚇かすために、ズウフラという機械を借りて来て、
秋雨の降るさびしい晩に、遠方から友達の名を呼ぶので、雨戸を明けてみると誰もいない....
「二、三羽――十二、三羽」より 著者:泉鏡花
で負けまじと鳴きしきる。可愛いもので。……可愛いにつけて、断じて籠には置くまい。
秋雨のしょぼしょぼと降るさみしい日、無事なようにと願い申して、岩殿寺の観音の山へ....
「隣の嫁」より 著者:伊藤左千夫
おはまはわきを見て相手にならない。政さんはだれへも渡りをつけて話をする。外は
秋雨しとしとと降って、この悲しげな雨の寂しさに堪えないで歩いてる人もあろう、こも....
「綺堂むかし語り」より 著者:岡本綺堂
敵に囲まれたように感じた。(明治39・11) 遼陽城外、すべて緑楊の村である。
秋雨の晴れたゆうべに宿舎の門を出ると、斜陽は城楼の壁に一抹の余紅をとどめ、水のご....
「人造人間事件」より 著者:海野十三
1 理学士|帆村荘六は、築地の夜を散歩するのがことに好きだった。 その夜も、彼はただ一人で、冷い
秋雨にそぼ濡れながら、明石町の河岸から新富町の濠端へ向けてブラブラ歩いていた。暗....
「獄中消息」より 著者:大杉栄
の労働、ああこの規則、これではたして二カ年半の長日月を堪え得るであろうか、などと
秋雨落日の夕、長太息をもらしたこともあった。面会のたびごとに「痩せましたね」と眉....
「中国怪奇小説集」より 著者:岡本綺堂
、夜の十一時を過ぐる頃であった。さらに茶菓の御馳走になって、十二時を合図に散会。
秋雨|瀟々、更けても降り止まなかった。 この日の講話が速記者幾人によって速記さ....
「海亀」より 著者:岡本綺堂
だ。」 鬢鬚のやや白くなった実業家の浅岡氏は、二、三人の若い会社員を前にして、
秋雨のふる宵にこんな話をはじめた。 そのころ、僕は妹の美智子と一緒に、本郷の親....
「女侠伝」より 著者:岡本綺堂
陰って来た。さして強くも降らないが、雨はしとしとと降りしきっている。漢詩人ならば
秋雨|蕭々とか何とか歌うべきところであろうが、我れわれ俗物は寒い方が身にしみて、....
「白花の朝顔」より 著者:泉鏡花
ると、いつか緒の解けたのが、血のように絡わって、生首を切って来たように見えます。
秋雨がざっと降って来る。……震え、震え、段を戻って、もう一度巻込んで、それから、....
「西航日録」より 著者:井上円了
す。ときに千百の知友、学生の余が行を送るありて、汽笛の声は万歳の声にうずめられ、
秋雨蕭々のうちに横浜に着す。ときに拙作二首あり。 留別 力学多年在帝都、始知....
「南半球五万哩」より 著者:井上円了
場跡なる水族館に至る。その闊大なるは、他にいまだ見ざるところなり。 十日、雨。
秋雨蕭々、南風颯々、晩秋の趣あり。日光丸帰航の途に就くをもって、訪問して船長およ....
「雨の宿」より 著者:岩本素白
らない。やがて彼方此方、音色の違った、然し同じくやや高い鐘の音が、入交って静かに
秋雨の中に響いて来る。じっと目を閉じて居たが、雨は如何にも落ちついて降り注いで居....
「仏教人生読本」より 著者:岡本かの子
さらば、母なる我の 子をおもう母のこころを 語りてもみん 折から東京の外の面は
秋雨 うすら冷たく庭草の濡れそぼつなか 眼に入るは、つわぶきの花の黄のいろ 子よ....