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移り香
「移り香〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
移り香の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「右門捕物帖」より 著者:佐々木味津三
こともないようなすばらしく上等の香のにおいがするのです。しかも、あきらかにそれが
移り香なんでしたから、右門はあわてて腕を切り取られた当の主人のところへやっていっ....
「右門捕物帖」より 著者:佐々木味津三
たのは、りっぱな男のお侍だよ。それだのに、持ってきたこの紙には、れっきとした女の
移り香が残っているんだ。しかも、この手跡をみろい。見取りの図面はめっぽうまずいが....
「右門捕物帖」より 著者:佐々木味津三
す! におうのです! ぷーんとなやましいはだのにおいが、否、紛れもないおしろいの
移り香がするのです。――同時でした。 「まさしく女だッ。飛んだお忘れものよ。含み....
「流行暗殺節」より 著者:佐々木味津三
い! なにをしているんです!」 目を吊りあげて、パッと飛びのいた。 鼻を刺す
移り香を楽しみでもするように直人は、しっかりと女の枕に顔をよせて、にやにやと笑っ....
「三人の相馬大作」より 著者:直木三十五
、主かいな 今宵帰して、いつの日か 濡れにくるかや、しっぽりと 抱いて、あかした
移り香の さめて、果敢《はか》なや、肌寒の 朝の廓の霜景色 霜にまごうか白い馬 ....
「宝石の序曲」より 著者:松本泰
?」 「わたしには分かるわよ。あなたの着物に、この間と同じトルコ煙草《たばこ》の
移り香がしていますもの。そして、あなたはあの方が来て以来、急に心配事ができたのね....
「源氏物語」より 著者:紫式部
た。女房たちが出て来て格子《こうし》などを閉《し》めたあとで、 「このお敷き物の
移り香の結構ですこと、どうしてあの方はこんなにすべてのよいものを備えておいでにな....
「源氏物語」より 著者:紫式部
らの座敷の前の紅梅が盛りで、あまりきれいだったから折って差し上げたのです。宮のお
移り香は実際|馥郁たるものだね。後宮の方たちだってああも巧妙に焚きしめることはで....
「源氏物語」より 著者:紫式部
になっても、ものを言わずにいる中の君に嫉妬をあそばして、 またびとになれける袖の
移り香をわが身にしめて恨みつるかな とお言いになった。夫人は身に覚えのない罪を....
「丹下左膳」より 著者:林不忘
だえたお艶は、ガバッと畳に倒れて羽織を抱きしめた。
別れともなくして別れた男の
移り香が、羽織に埋めたお艶の鼻をうっすらとかすめる。
それがまた新しい泪をさそ....
「初恋」より 著者:矢崎嵯峨の舎
へ手をやッて見ると、温かい,静々室の内を見廻わして見たが、どうも娘がいたようで、
移り香がしているような気がする、さアそう思うと、気が休まらぬ。床の上へ起き直ッて....
「光り合ういのち」より 著者:倉田百三
ず、舞い納めると簾の奥に静かにかくれてしまった。 伯父と家に帰った私には何かの
移り香が残っていた。 万葉集にある めづらしと吾が思うきみは秋山の初もみぢ葉に....
「魔都」より 著者:久生十蘭
ヤ笑いながら、
「何だ、酔ってるのか。酒粕の焼いたのはご免だよ。寄るな、寄るな、
移り香がすらア」
笑子はたちまち目を吊し上げて、
「畜生、ぬかしやがったな」
....
「ピストルの使い方」より 著者:泉鏡花
らず、絣の羽織の袖を、居寄って振袖の紫に敷いて熟と瞻たのであったが、 「せめて、
移り香を。」 「厭味たらしい、およしなさい、柄にもない。……じゃあ私も気障をして....
「中世の文学伝統」より 著者:風巻景次郎
近い霞み方である。静艶の夜気の中に身を任せては、梅の香にそのかみの親しかった人の
移り香を想うが、もとより寂としてすべては再びくることのない思い出の上に、月の光の....