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稀ら
「稀ら〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
稀らの前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「黒死館殺人事件」より 著者:小栗虫太郎
続いて、昨夜神意審問会が行われた室を調べることになったが、そこは、この館には
稀らしい無装飾の室で、確かに最初は、算哲の実験室として設計されたものに相違なかっ....
「うつり香」より 著者:近松秋江
のに、加藤の家の老人夫婦の物堅い気楽そうな年越しの支度を見て、私は自分の心までが
稀らしく正月らしい晴れやかな気持ちになった。 そして翌日の大晦日には日の暮れる....
「南路」より 著者:宮本百合子
とではなかった。始めは、何でもない家庭の情況、次に、改めて「卿等」という、父には
稀らしい呼びかけの言葉で、我々の結婚に対する返事が書かれているのだ。 私は、そ....
「残されたる江戸」より 著者:柴田流星
好む、往々上野の展覧会場に半日の清閑を楽しんで、その憧憬を恣にすることは必ずしも
稀らしくない。しかしかれは文盲だ、眼に一丁字なく、耳に一章句を解せぬが、しかもよ....
「めでたき風景」より 著者:小出楢重
を何か喋らねばならぬのも億劫の種であるので、とうとう一ケ月以上も入浴をしない事は
稀らしくはなかった。殊に南仏カアニュにいた時などはその村に一軒の湯屋もなく私の宿....
「雪たたき」より 著者:幸田露伴
町外れというのでは無いが物静かなところである。 夕方から零ち出した雪が暖地には
稀らしくしんしんと降って、もう宵の口では無い今もまだ断れ際にはなりながらはらはら....
「人口論」より 著者:マルサストマス・ロバート
ならないように思われる。住民が非常な欠乏に遭遇しているように思われた特殊な場合は
稀らしくないと云われているが、かかる時にはこの土人のある者は骨ばかりになり、また....
「夢殿殺人事件」より 著者:小栗虫太郎
かのような兇器を、想像するより外にないのだった。法水は盤得尼を振り向いて、彼には
稀らしいくらい、神経的な訊き方をした。 「何んとなく僕には、これが梵字のように思....
「南国太平記」より 著者:直木三十五
がったな」
職人が、太い声をした。辻番人が
「いい女だなあ。屋敷者には、一寸、
稀らしい玉だぜ」
「女郎に売ったら儲かるだろうな」
庄吉は、黙って、往来へ出た....
「道」より 著者:織田作之助
、その寂しい小駅に降り立つ人影は跫音もせぬくらいまばらである。たった一人の時さえ
稀らしくなく、わざわざ改札に起きだして来るのも億劫なのであろう。したがって渡し損....
「痀女抄録」より 著者:矢田津世子
は滅多になかった。ずっと以前、弘前から繍の道を修めに出京した相馬という人の仕事を
稀らしく師匠は賞めたことがあった。この相馬氏も軈て立派に一家をなして業界に重きを....
「女心拾遺」より 著者:矢田津世子
をもんで、わっはっはっと高笑いをするのだった。 唐沢氏がこんなにも上機嫌なのは
稀らしいことである。老夫人の伊予子には、それが嬉しいというよりも、何かちぐはぐな....
「誘拐者」より 著者:山下利三郎
に注意しながら春日は塀の隙間から覗いた、外は小路を隔てて向側は他家の塀で、通行は
稀らしい。 眼を離すとき左手の丸木柱と塀との間に、六寸程の竹片が挟んであるのを....
「「明治のおもかげ」序にかえて」より 著者:喜多村緑郎
しい場所へ足を入れるものは殆ど尠なかった。この点、庵主金升もその主義だった。正に
稀らしい寄合といえる。だが、家のものとしては、年頃でいて、のらくらと夜更しの連続....
「あの世の入口」より 著者:知里真志保
その際訪れた蘭法華の丘の上のアフンルパ※と呼ばれている遺跡は、その形態がすこぶる
稀らしく、今後の研究に重要な意味をもつものがあると思われたので、その後も数回にわ....