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稲穂
「稲穂〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
稲穂の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「偸盗」より 著者:芥川竜之介
のである。
犬は、新しい餌食を見ると、一瞬のいとまもなく、あらしに吹かれて飛ぶ
稲穂のように、八方から次郎へ飛びかかった。たくましい黒犬が、太刀《たち》の上をお....
「浮動する地価」より 著者:黒島伝治
そこに繁茂した。秋の末になると、その雑草は、灰色になって枯れた。黄金色にみのった
稲穂の真中を、そこだけは、真直に、枯色の反物を引っぱったようになっていた。秋から....
「千曲川のスケッチ」より 著者:島崎藤村
も莢を垂れていた。稲の中には既に下葉の黄色くなったのも有った。九月も半ば過ぎだ。
稲穂は種々で、あるものは薄の穂の色に見え、あるものは全く草の色、あるものは紅毛の....
「夜明け前」より 著者:島崎藤村
のは隣家伏見屋の年寄役伊之助だ。田畑のことは確かにもわからないが、この大荒れでは
稲穂もよほど痛んだのではないかと言って、彼のそばに来てその心配を始めるのは問屋の....
「縮図」より 著者:徳田秋声
ことにしたのだったが、松の内のことで、彼女たちは揃って出の支度であり、縁起ものの
稲穂の前插しなどかざして、しこたま買いこんだ繭玉や達磨などをてんでにぶら下げ、行....
「みみずのたはこと」より 著者:徳冨健次郎
の野にさす雲の翳の様に、淡い哀がすうと主人の心を掠めて過ぎた。
麦の穂
稲穂
村の一年
一
都近い此辺の村では、陽暦陰暦....
「みさごの鮨」より 著者:泉鏡花
れ上って、なお堪えず、おほほほほ、笑声を吸込んで、遣切れなくなって、はち切れた。
稲穂がゆさゆさと一斉に揺れたと思うと、女の顔がぼっと出て、髪を黒く、唇を紅く、 ....
「沼夫人」より 著者:泉鏡花
の時分から、苗代、青田、豆の花、蜻蛉、蛍、何でも田圃が好で、殊に二百十日前後は、
稲穂の波に、案山子の船頭。芋※の靡く様子から、枝豆の実る処、ちと稗蒔染みた考えで....
「十二支考」より 著者:南方熊楠
協会北支那部雑誌』二輯十一巻五九頁)、天復中隴右の米作大豊年で、刈ろうと思う内、
稲穂が大半なくなり大饑饉|出来《しゅったい》した。その時田畔の鼠穴を掘ると夥しく....
「万葉秀歌」より 著者:斎藤茂吉
れているから、感情の強く豊かな御方であらせられたのであろう。 一首は、秋の田の
稲穂の上にかかっている朝霧がいずこともなく消え去るごとく(以上序詞)私の切ない恋....
「山の秋」より 著者:高村光太郎
なるともう鳴かなくなり、何となく夏らしい勢が山野に見えなくなってしまい、たんぼの
稲穂がそろそろ七月末にはきざしてくる。
稲穂の育ってくる頃、山や野にツナギという恐....
「地上」より 著者:島田清次郎
り入れなくてはならない百姓達は晩くまで野に働いていた。地は一面に誇らしい黄金色の
稲穂の波をうねらせている野面が北野家の奥座敷から木の間隠れに見わたされる。 「お....
「おせん」より 著者:邦枝完二
。……」 「くどいわ。放せというに、放さぬか」 夢中で振り払ったお蓮の片袖は、
稲穂のように侍女の手に残って、惜し気もなく土を蹴ってゆく白臘の足が、夕闇の中にほ....
「句合の月」より 著者:正岡子規
を見渡すと限りもなく広い田の稲は黄色に実りて月が明るく照して居るから、静かな中に
稲穂が少しばかり揺《ゆ》れて居るのも見えるようだ。いい感じがした。しかし考が広く....
「仏教人生読本」より 著者:岡本かの子
雀が饑餓という因により、羽翼の羽ばたきという縁によって稲田のところへ飛んで来て、
稲穂を啄もうとするのが果であります。すると、こちらの農夫も、鳴子という因を田の上....