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穂波
「穂波〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
穂波の前後の文節・文章を表示しています。該当する12件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「みみずのたはこと」より 著者:徳冨健次郎
。大麦も小麦も見渡す限り穂になって、緑の畑は夜の白々と明ける様に、総々とした白い
穂波を漂わす。其が朝露を帯びる時、夕日に栄えて白金色に光る時、人は雲雀と歌声を競....
「石狩川」より 著者:本庄陸男
た顔は、むらがり咲いた名も知らぬ野の花のようなものだ。さしあげた手は風に吹かれる
穂波であった。口々に何かを大ごえに叫んでいる。ひろげた指は掻《か》き寄せようと、....
「道標」より 著者:宮本百合子
空のところに――というのは、あいにく絵が下手で、そのプラカートの上に描かれた麦の
穂波は、一面の黄色っぽい絵の具の洪水にすぎないのだったが――「成功に眩惑するな」....
「夜の靴」より 著者:横光利一
。樹木のめりめり倒れる音。鳴きつづける山鳩の憂鬱な声。右往左往して揺れ暴れる稲の
穂波。割れ裂けるガラス窓。水面の青葉をひっ冠ったまま跳ね上る鯉。 そこへ私にこ....
「日輪」より 著者:横光利一
くものは見えなかった。 そのとき、今まで、泉の上の小丘を蔽って静まっていた萱の
穂波の一点が二つに割れてざわめいた。すると、割れ目は数羽の雉子と隼とを飛び立たせ....
「大和路・信濃路」より 著者:堀辰雄
前景にして、大和平《やまとだいら》一帯が秋の収穫を前にしていかにもふさふさと稲の
穂波を打たせながら拡がっている。僕はまぶしそうにそれへ目をやっていたが、それから....
「山の秋」より 著者:高村光太郎
だから思いきりあかるい。風呂に入れば湯ぶねの中にも月光はさし、野に出ればススキの
穂波が銀にきらめく。まったく寝るのが惜しくなって、わたくしはよくその光にぬれて深....
「次郎物語」より 著者:下村湖人
の生れ故郷の、あの沢辺の晴れた秋景色を想像した。そこには芦が密生していて、銀色の
穂波がまばゆいように陽に光っている。一羽の真白な鳥が、ふわりと青空を舞いおりて、....
「悪因縁の怨」より 著者:江見水蔭
海の方からして、真黒な雲が出て来たと思うと、早手の風が吹起って、川浪も立てば、
穂波も立ち、見る見る昼も夜の如く暗くなって、大夕立、大|雷鳴。川上の矢口の渡で新....
「おりき」より 著者:三好十郎
高地である。眼を開いていられぬほどに明るい夏の午後。 人の姿はなく、ただ麦畑の
穂波の一個所が、モゴモゴと動いている。 シンカンとした永い間。 奥の谷の方から....
「母子像」より 著者:久生十蘭
縮でした」と軽く会釈すると、事務机を挟んで教諭と向きあう椅子に掛けた。尾花が白い
穂波をあげて揺れているのが、横手の窓から見えた。 「こちらは少年相談所の補導さん....
「銀河まつり」より 著者:吉川英治
た。郷士の娘で、小締めな体つきで、顔だちがよかった。木立の外に立って、延徳街道と
穂波のほうから戸狩へはいる白い道すじを見張っていた。 墓地といっても、この地方....