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「空し〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す

空しの前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
或敵打の話」より 著者:芥川竜之介
まま、蘭袋に礼を云うつもりか、床の上へ乱れた頭《かしら》を垂れた。そうしてついに空しくなった。…… 寛文《かんぶん》十年|陰暦《いんれき》十月の末、喜三郎は独....
素戔嗚尊」より 著者:芥川竜之介
、最後の力さえ涸《か》れ尽きていた。だから彼は心身とも、まるで破れた船のように、空しく騒ぎ立つ波に臨んだまま、まっ白に落す豪雨を浴びて、黙然《もくねん》と坐って....
さまよえる猶太人」より 著者:芥川竜之介
問であった。 自分は、数年来この二つの疑問に対して、何等の手がかりをも得ずに、空しく東西の古文書《こもんじょ》を渉猟《しょうりょう》していた。が、「さまよえる....
惜みなく愛は奪う」より 著者:有島武郎
尊敬を払っているが故に、そして氏の生得の高貴な性格を知っているが故に、その言葉の空しい罵詈でないのを感じて私自身の卑陋を悲しまねばならなかった。氏が凡ての虚偽と....
陽炎座」より 著者:泉鏡花
癖、ここに尋ね当った現下は何も聞えぬ。…… 絵の藤の幕間で、木は入ったが舞台は空しい。 「幕が長いぜ、開けろい。遣らねえか、遣らねえか。」 とずんぐり者の頬....
薄紅梅」より 著者:泉鏡花
の階の下に、ただ一人、褄を折り緊め、跪いて、天女を伏拝む女がある。 すぐ傍に、空しき蘆簀張の掛茶屋が、埋れた谷の下伏せの孤屋に似て、御手洗がそれに続き、並んで....
照葉狂言」より 著者:泉鏡花
かりし、わが二階家の、今は平家に建直りて、煙草屋の店開かれたり。扇折の住みし家は空しくなり、角より押廻せる富家の持地となりて、黒き板塀建て廻されぬ。 そのあた....
黒百合」より 著者:泉鏡花
雪は黙って婆さんの顔を見たが、詮方なげで哀である。 「お前様、何といっても、」と空しく手を掉って、伸上った、婆は縋着いても放したくない。 「知事様のお使だ。」と....
霊界通信 小桜姫物語」より 著者:浅野和三郎
私の決心の飽まで固いのを見て、両親も無下に帰家をすすめることもできず、そのまま空しく引取って了われました。そして間もなく、私の住宅として、海から二三|丁引込ん....
霊訓」より 著者:浅野和三郎
に暮れるばかり、守護の天使とても、境涯の懸隔は、これを如何ともするに由なく、ただ空しく、遠方から淪落の痴漢の暗き行末を、あわれみの眼もて見送るより外に、せん術が....
幸福のうわおいぐつ」より 著者:アンデルセンハンス・クリスチャン
の美はひらかれ モンブランの山|天そそる姿をあらわす。 嚢中のかくもすみやかに空しからずば、はや あわれ、いつまでもこの景にむかいいたらまし。 みるかぎり....
良夜」より 著者:饗庭篁村
とは在所へ言いもやられず、この上は塾僕学僕になりてもと奮発せしかど、さる口もなく空しくこの家に厄介となり、鼻紙の事まで深沢の世話になるようになれば、深沢は頓着せ....
多神教」より 著者:泉鏡花
と仕丁は反対に社宅―舞台|上には見えず、あるいは遠く萱の屋根のみ―に入る。舞台|空し。落葉もせず、常夜燈の光|幽に、梟。二度ばかり鳴く。) 神職 (威儀いかめし....
清心庵」より 著者:泉鏡花
ね、盂蘭盆にはさすがに詣で来る縁者もあるを、いやが上に荒れ果てさして、霊地の跡を空しゅうせじとて、心ある市の者より、田畑少し附属して養いおく、山番の爺は顔|丸く....
大利根の大物釣」より 著者:石井研堂
。』 お茶屋主人の好く釣ること、聴く毎に嘆賞すべきことのみにて、釣聖の名あるも空しからざるを知りぬ。 船『私どもを連れて来ましても、船を扱わせるだけで、場所の....