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空しい
「空しい〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
空しいの前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「恩讐の彼方に」より 著者:菊池寛
くわ。十の一も穿ち得ないで、おのれが命を終ろうものを」と、行路の人々は、市九郎の
空しい努力を、悲しみ始めた。が、一年経ち二年経ち、ちょうど九年目の終りに、穴の入....
「世相」より 著者:織田作之助
ではなかった。その事件を中心に昭和十年頃の千日前の風物誌を描こうという試みをふと
空しいものに思う気持が筆を渋らせていたのだ。千日前のそんな事件をわざわざ取り上げ....
「仇討三態」より 著者:菊池寛
越えて信濃を経て、北陸路に出て、金沢百万石の城下にも足を止めてみた。が、その旅も
空しい辛苦だった。近江から京へ上ったのが、元禄九年の冬の初めである。国を出てから....
「惜みなく愛は奪う」より 著者:有島武郎
尊敬を払っているが故に、そして氏の生得の高貴な性格を知っているが故に、その言葉の
空しい罵詈でないのを感じて私自身の卑陋を悲しまねばならなかった。氏が凡ての虚偽と....
「赤耀館事件の真相」より 著者:海野十三
には帰って来るであろうと、眠さも忘れ唯不安な気持一杯で待ち尽しましたが、これも亦
空しい期待に終りました。それから夕陽が赫々と赤耀館の西側の壁体に照り映えるころを....
「地球盗難」より 著者:海野十三
から、岩蔵を助けだしてくるまでに十分ほどの時間が流れた。この間、大隅と佐々とは、
空しい悲憤を語りあったに過ぎなかった。 義足をつけた岩蔵の姿を見たとき、二人の....
「獏鸚」より 著者:海野十三
出した第一、第二等々の解読文字を一つ一つ丹念に試みていった。――しかし今日もまた
空しい努力に終ったのだった。 「いよいよ二三日うちにこの金庫を焼き切ることにした....
「陽炎座」より 著者:泉鏡花
癖、ここに尋ね当った現下は何も聞えぬ。…… 絵の藤の幕間で、木は入ったが舞台は
空しい。 「幕が長いぜ、開けろい。遣らねえか、遣らねえか。」 とずんぐり者の頬....
「道」より 著者:織田作之助
描き乾いた雑巾を絞るような努力もしてみるのだが、その夜の道がそうした努力をすべて
空しいものにしてしまうのである。なにもかもその道が無理矢理にひきずって行く。それ....
「可能性の文学」より 著者:織田作之助
の場としようという近代小説への手の努力も、兎や虫を観察する眼にくらべれば、ついに
空しい努力だと思わねばならなかったところに、日本の芸術観の狭さがあり、近代の否定....
「奇巌城」より 著者:菊池寛
くしんとしてしまった。アルセーヌ・ルパン!大冒険家大盗賊王、眼に見えぬ彼ルパンは
空しい大捜索の幾日間を、どこかの隅で傷に苦しんでいる。不敵の敵は本当にルパンであ....
「文学的饒舌」より 著者:織田作之助
に書いているのだが、ふと東西古今の大傑作のことを考えると、苦労も努力も工夫もみな
空しいもののような気がしてならない。しかし、それでも書きつづけて行けば、いつかは....
「なよたけ」より 著者:加藤道夫
ずしい哀れな男がひとりいたのです。……身はやんごとない家柄に生れは致したものの、
空しい孤独の男でした。……侘し過ぎました、あまりにも侘し過ぎました。……… 琴の....
「レモンの花の咲く丘へ」より 著者:国枝史郎
見ぬふりに黙っておりましたが、貴女より今のように打ち明けられては、今までの苦心も
空しいものとなりました。(力強く)とてものことにその紅い花の送り主を、私に打ち明....
「飛騨の怪談」より 著者:岡本綺堂
ぎない。 「阿父さん……。」 切てもの心床しに、市郎は父の名を呼んだが、魂魄の
空しい人は何とも答えなかった。 「阿父さん……。」 彼は再び呼んだ。呼んで返ら....