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空漠
「空漠〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
空漠の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「錯覚自我説」より 著者:辻潤
。われ等はパンによってのみ生きる者である。思想は決して飯の菜にさえなり得ない程に
空漠たるものである。「自我」の存在の有無の如きはわれ等の生活となんのかかわるとこ....
「金魚撩乱」より 著者:岡本かの子
丸く肥えて愛くるしい魚の胴が遅々として進む。復一は生ける精分を対象に感じ、死灰の
空漠を自分に感じ、何だか自分が二つに分れたもののように想えて面白い気がした。復一....
「黒死館殺人事件」より 著者:小栗虫太郎
ものにすぎなかったではないか。それだのに法水は、それを犯罪分析の実際に応用して、
空漠たる思惟抽象の世界に踏み入って行こうとする……。
「ああ私は……」と鎮子は露....
「霜凍る宵」より 著者:近松秋江
て、積日の辛苦を寛げようと思って電車の方に歩いてくると、去年の十二月の初めから、
空漠とした女の居処を探すためにひょっとしたら懊悩の極、喪失して病死しはせぬだろう....
「鉄面皮」より 著者:太宰治
私は生きのびて、ことし三十五になった。そろそろいい時分だ、なんて書くと甚だ気障な
空漠たる美辞麗句みたいになってつまらないが、実朝を書きたいというのは、たしかに私....
「巴里祭」より 著者:岡本かの子
巴里祭の雑沓の中を駆け廻りたいような衝動にかり立てられた。また心の一方ではあまり
空漠とした欲望を広い巴里に持ちあぐむ自分にあきれ返って、やけに酒でも飲みに連れの....
「かの女の朝」より 著者:岡本かの子
で、大きなおならの音がした。かの女の引締まって居た気持を、急に飄々とさせるような
空漠とした音であった。 ――パパ、聞こえた? 逸作とかの女は不意に笑った顔を....
「万葉秀歌」より 著者:斎藤茂吉
というのは現実の細かい写実といおうよりは一つの「感」で運んでいるが、その「感」は
空漠たるものでなしに、人間の観察が本となっている点に強みがある。そこで、「霜ふり....
「小春」より 著者:国木田独歩
おける景色のごときものにてはあらざりき。一室に孤座する時 もしこの事、単にわが
空漠たる信念なりとするも、わが心この世の苦悩にもがき暗憺たる日夜を送る時に当たり....
「夢は呼び交す」より 著者:蒲原有明
もやもやとした雲霧の渦流する中に、一点でも明るいところが示されたこと、そのことを
空漠たる回想を辿って読み取っていた時、果して、その時その家で、平凡な子供が一人生....
「科学的新聞記者」より 著者:桐生悠々
稀であるが、屡宇宙という語を口にする。だが、宇宙に関する近代的理念は思ったよりも
空漠である。この
空漠性は最近の世紀に於ける包括的思索が欠けているからである。その....
「ねじくり博士」より 著者:幸田露伴
学と静力学を君が知ていると、もッと早く分らせることが出来るがネ。早くいッて見れば
空漠として広い虚空の中に草の蔓は何故無法に自由自在に勝手に這い回らないのだろう。....
「残された日」より 著者:小川未明
が寒く、わびしくなって見えました。いままでそこには知った顔があったのが、まったく
空漠となって机だけがならんでいるばかりです。そしてうす濁ったように曇ったガラス窓....
「空中征服」より 著者:賀川豊彦
っているのです」 「気の毒だね、どうにかせねばならぬね」 賀川市長は政治の実に
空漠なることを思いながら、首のない男に近づいて、 「君はその首を売るのですか? ....
「仏教人生読本」より 著者:岡本かの子
重なりがあるばかりで、これが女の像とはもちろん受け取れないばかりでなく、却って、
空漠たる画面が寒さを襲うばかりでありました。しかし老大家は得意の絶頂です。その画....