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空谷
「空谷〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
空谷の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「山月記」より 著者:中島敦
? 己は堪《たま》らなくなる。そういう時、己は、向うの山の頂の巖《いわ》に上り、
空谷《くうこく》に向って吼《ほ》える。この胸を灼く悲しみを誰かに訴えたいのだ。己....
「永日小品」より 著者:夏目漱石
腹が張れば、腹がせっぱ詰《つま》って、いかにも苦しい。そこで帽子を被《かぶ》って
空谷子《くうこくし》の所へ行った。この
空谷子と云うのは、こういう時に、話しをする....
「夜行巡査」より 著者:泉鏡花
てただ前途のみを志すを得《う》るなりけり。 その靴《くつ》は霜のいと夜深きに、
空谷を鳴らして遠く跫音《きょうおん》を送りつつ、行く行く一番町の曲がり角のややこ....
「般若心経講義」より 著者:高神覚昇
言葉としか聞こえませんが、さすがに舎利弗には、この「因縁」という一語が、さながら
空谷の跫音のごとくに、心の耳に響いたのでした。昔から仏教では、この一句を「法身偈....
「夜の靴」より 著者:横光利一
から露れて来た茨の実。回復して来た空に高く耀く柿の実。紅葉の中から飛び立つ雉子の
空谷にひびき透る羽音。農家はこうしてまた急がしくなって来たようだ。朝霧の中で揺れ....
「大菩薩峠」より 著者:中里介山
ず、開山以来、尊重したその山の樹木を伐り、山を崩して、金儲けをしようとは何事だ」
空谷《くうこく》の中に立って、この男がこう叫びました。七兵衛は、よくいってくれた....
「取舵」より 著者:泉鏡花
ゃ耐らん。ちと甲板へお出でなさい。涼しくッてどんなに心地が快か知れん。」 これ
空谷の跫音なり。盲人は急遽声する方に這寄りぬ。 「もし旦那様、何ともはや誠に申兼....
「昭和四年の文壇の概観」より 著者:平林初之輔
言えるであろう。しかし、零細な、身辺小説の中にあって、この老大家の精進はたしかに
空谷の足音であった。 「唐人お吉」についで「あの道この道」を発表し、さらに、「街....
「キビキビした青年紳士」より 著者:甲賀三郎
符」などの名篇が陸続として現われた。 当時これ等の名篇は創作探偵小説界に於ける
空谷の跫音として、何人も一読三嘆したものだが、O君の伝える所によると、作者は相当....
「明治の文学の開拓者」より 著者:内田魯庵
だった――その戯作を堂々と署名して打って出たという事は実に青天の霹靂といおう乎、
空谷の跫音といおう乎、著るしく世間を驚かしたものだ。 自分の事を言うのは笑止し....
「チベット旅行記」より 著者:河口慧海
小剣を並べたごとく、一度|舐られるとどんなものでもずたずたに切れてしまうという。
空谷怪獣に遇う
私はその後その舌の乾かしたのを見ましたがその舌の乾いたので馬....
「西航日録」より 著者:井上円了
本井上円了博士遠訪于哲孟雄金剛宝土贈詩和之 万死奔亡救国危、余生身世入須弥、何当
空谷来鸞嘯、了尽人天更不悲。康有為 (日本の井上円了博士は遠く哲孟雄金剛宝土を訪....
「鳴門秘帖」より 著者:吉川英治
中の静寂――、それはだいぶ遠いらしいが、世阿弥の耳へは怖ろしく近く聞こえてくる。
空谷の跫音である。 世阿弥は耳をたてて、その人声のする方へ伸びあがった。 た....
「黒部川奥の山旅」より 著者:木暮理太郎
い花を綴っているが、下を覗いただけで身顫いして引返した。東寄りの岩壁の間の急峻な
空谷を草に攫りながら背向きにドッと辷り下りる。其処から右に切れて岩の多い草地に腰....
「黒部川を遡る 」より 著者:木暮理太郎
ると、忽ち崖下に黒部川の奔湍が現れる、水はもう濁った赤土色でないのは嬉しかった。
空谷を過ぎて、山かせぎなどする人の休場である山の鼻で一休する。桂、椈の大木が多い....