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突立つ
「突立つ〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
突立つの前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「婦系図」より 著者:泉鏡花
優しかった。 「ああ。」と、安堵の溜息を一所にして、教頭は室の真中に、ぼんやりと
突立つ。 河野の姿が、横ざまに飛んで、あたふた先へ立って扉を開いて控えたのと、....
「海異記」より 著者:泉鏡花
き乳児を残して、日ごとに、件の門の前なる細路へ、衝とその後姿、相対える猛獣の間に
突立つよと見れば、直ちに海原に潜るよう、砂山を下りて浜に出て、たちまち荒海を漕ぎ....
「今日の文学の展望」より 著者:宮本百合子
は、主人公の良心の表現においても、当時の文壇的風潮をなしていた行為性、逆流の中に
突立つ身構えへの憧憬、ニイチェ的な孤高、心理追求、ドストイェフスキー的なるもの等....
「草迷宮」より 著者:泉鏡花
教えたる葭簀の外。 さっくと削った荒造の仁王尊が、引組む状の巌続き、海を踏んで
突立つ間に、倒に生えかかった竹藪を一叢隔てて、同じ巌の六枚|屏風、月には蒼き俤立....
「灯明之巻」より 著者:泉鏡花
りに、まぶしくない――仰向けに崖の上を仰いで、いま野良声を放った、崖縁にのそりと
突立つ、七十余りの爺さんを視ながら、蝮は弱ったな、と弱った。が、実は蛇ばかりか、....
「大菩薩峠」より 著者:中里介山
のに楽屋の奥から、周章者《あわてもの》が息せき切って飛び出して来て、舞台の真中に
突立つや、顔の色を変えて、帰りかける見物の方に向い、 「百姓!」 と大きな声で怒....
「黒百合」より 著者:泉鏡花
の縁の柱には、男の薄暗い形が顕われる。 島野は睨み見て、洋杖と共に真直に動かず
突立つ。お雪は小洋燈に灯を移して、摺附木を火鉢の中へ棄てた手で鬢の後毛を掻上げざ....
「沼夫人」より 著者:泉鏡花
線路の上には、ばらばらと人立がして、明い雲の下に、海の方へ後向に、一筆画の墨絵で
突立つ。蓑を脱いで手に提げて鍬を支いた百姓だの、小児を負った古女房だの、いかにも....
「星女郎」より 著者:泉鏡花
手足の筋の弛んだ処で、馬場の外れへ俵転がし、むっくりこと天窓へ星を載せて、山端へ
突立つ、と目が眩んだか、日が暮れたか、四辺は暗くなって何も見えぬ。 で、見返り....
「俊寛」より 著者:倉田百三
た立ち上がりて狂えるごとく衣を裂く)あゝ悪魔よ。わしの呪いをいれよ! (岩かどに
突立つ。烈風|蓬髪を吹く。俊寛両手を天に伸ばす)わしはあらゆる悪鬼の名によって呪....
「怪異暗闇祭」より 著者:江見水蔭
透して見た。すると大きな大きな欅の樹の、すでに立枯れになっているのが、妖魔の王の
突立つ如くに目に入った。その根下に、怪しい人影が一個認められた。 気になるので....
「ドーヴィル物語」より 著者:岡本かの子
燦かし始めた。ドーヴィル市の屋根が並べた赤、緑、灰色の鱗を動かして来た。その中に
突立つ破風造りの劇場、寺の尖塔(上べは綺麗ずくめで実は罪悪ばかりの素材で作り上げ....
「葛飾砂子」より 著者:泉鏡花
だ、濡れていても構うめえ、どッこいしょ。」 七兵衛は※のような足つきで不行儀に
突立つと屏風の前を一跨、直に台所へ出ると、荒縄には秋の草のみだれ咲、小雨が降るか....
「式部小路」より 著者:泉鏡花
根岸の鴨川同断だ。江戸ッ児の面汚し、さあ、合点が出来ねえぞ、)とぐるぐると廻って
突立つから、慌てて留める婆さんを、刎ね飛ばす、銚子が転がる、膳が倒れる、どたばた....
「黒部川奥の山旅」より 著者:木暮理太郎
頂を一刀に刻み上げている。山稜の大波は更に北に走って、鉢ヶ岳、雪倉岳の波頭が白く
突立つ。遥に離れて尨大な朝日岳から蒼い穏かな線のうねりが遠く天際に揺曳して、無辺....