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端然
「端然〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
端然の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「戯作三昧」より 著者:芥川竜之介
ら光っている、どこか妙に取り澄ました男が、細い銀の煙管《きせる》をくわえながら、
端然と座敷のまん中に控えている。彼の書斎には石刷《いしずり》を貼《は》った屏風《....
「疑惑」より 著者:芥川竜之介
わ》のうす暗がりには、私の全く見知らない四十恰好《しじゅうがっこう》の男が一人、
端然として坐っていた。実を云えばその瞬間、私は驚愕《きょうがく》――と云うよりも....
「黒衣聖母」より 著者:芥川竜之介
洞《ぼんぼり》の光に透《す》かして見ると、古びた錦の御戸帳《みとちょう》の後に、
端然と立っている御神体は、ほかでもない、この麻利耶観音なのです。お栄はそれを見る....
「或日の大石内蔵助」より 著者:芥川竜之介
の大石内蔵助良雄《おおいしくらのすけよしかつ》は、その障子を後《うしろ》にして、
端然と膝を重ねたまま、さっきから書見に余念がない。書物は恐らく、細川家の家臣の一....
「路上」より 著者:芥川竜之介
上って、崩《くず》れるように後《うしろ》へ流れて行く。俊助はそう云う背景の前に、
端然と坐っている辰子の姿を、しばらくの間見下していたが、やがてその沈黙がそろそろ....
「俊寛」より 著者:芥川竜之介
の上には経文《きょうもん》と一しょに、阿弥陀如来《あみだにょらい》の尊像が一体、
端然と金色《こんじき》に輝いていました。これは確か康頼《やすより》様の、都返りの....
「婦系図」より 著者:泉鏡花
気怯れがして、奥方にもちょいと挨拶をしたばかり。その挨拶を受けらるる時の奥方が、
端然として針仕事の、気高い、奥床しい、懐い姿を見るにつけても、お蔦に思較べて、い....
「海神別荘」より 著者:泉鏡花
り。黒髪を背に捌く。青地錦の直垂、黄金づくりの剣を佩く。上段、一階高き床の端に、
端然として立つ。) 爺い、見えたか。 侍女五人、以前の一人を真先に、すらすらと....
「貝の穴に河童の居る事」より 著者:泉鏡花
。」この時の白髪は動いた。 「爺い。」 「はあ。」と烏帽子が伏る。 姫は床几に
端然と、 「男が、口のなかで拍子を取るが……」 翁は耳を傾け、皺手を当てて聞い....
「陽炎座」より 著者:泉鏡花
は?……」 黒縮緬の雪女は、さすが一座に立女形の見識を取ったか、島田の一さえ、
端然と済まして口を利こうとしないので、美しい女はまた青月代に、そう訊いた。 「嵐....
「唄立山心中一曲」より 著者:泉鏡花
いて行きます。……袖の下には、お位牌を抱いて葬礼の施主に立ったようで、こう正しく
端然とした処は、視る目に、神々しゅうございます。何となく容子が四辺を沈めて、陰気....
「菎蒻本」より 著者:泉鏡花
土産にしようと思って、水天宮様の御蝋の燃えさしを頂いて来たんだよ、と申しますと、
端然と居坐を直して、そのふっくりした乳房へ響くまで、身に染みて、鳩尾へはっと呼吸....
「薄紅梅」より 著者:泉鏡花
新聞の挿絵受持で一座の清方さんは、下町育ちの意気なお母さんの袖の裡に、博多の帯の
端然とした、襟の綺麗な、眉の明るい、秘蔵子の健ちゃんであったと思う。 さて続い....
「縁結び」より 著者:泉鏡花
そうにつと寄って、両手でがさがさと引き出して、立直って持って出て、縁側を背後に、
端然と坐った、お君のふっくりした衣紋つきの帯の処へ、中腰になって舁据えて置直すと....
「註文帳」より 著者:泉鏡花
んで、肝を冷しながら、明を目的に駆けつけると、洋燈は少し暗くしてあったが、お杉は
端然坐ったまま、その髷、その櫛、その姿で、小鍋をかけたまま凍ったもののごとし。 ....