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簪
「簪〜」の文章内での使われ方:小説や文学作品の中から探す
簪の前後の文節・文章を表示しています。該当する15件の作品を表示しています。
検索対象[仮名遣い:新字新仮名]
「大導寺信輔の半生」より 著者:芥川竜之介
大溝《おおどぶ》に面した貸本屋を、人の好い貸本屋の婆さんを、婆さんの内職にする花
簪《はなかんざし》を。婆さんはやっと小学へ入った「坊ちゃん」の無邪気を信じていた....
「奇遇」より 著者:芥川竜之介
て僕が眼を外《そ》らせば、じっとまたこちらを見つめている。何だか翡翠《ひすい》の
簪《かんざし》や金の耳環《みみわ》が幕の間《あいだ》に、ちらめくような気がするが....
「奇怪な再会」より 著者:芥川竜之介
いと云えば昔の着物は、一つもこっちへは持って来なかったかい?」
「着物どころか櫛
簪《くしかんざし》までも、ちゃんと御持参になっている。いくら僕が止せと云っても、....
「葱」より 著者:芥川竜之介
向いていても、とにかく一通りの美人である。それが髪をまん中から割って、忘れな草の
簪《かんざし》をさして、白いエプロンをかけて、自働ピアノの前に立っている所は、と....
「お律と子等と」より 著者:芥川竜之介
んか?」
姉は父の方へ向き直ると、突然険しい目つきを見せた。
「あの時はお前も
簪《かんざし》だの櫛《くし》だの買って貰ったじゃないか?」
「ええ、買って貰いま....
「星座」より 著者:有島武郎
くありきたりの髷だったが、何という名だか園は知らなかった)の根にさした銀の平打の
簪《かんざし》を抜いて、その脚でするすると一方を切り開いた。その物慣れた仕草《し....
「婦系図」より 著者:泉鏡花
いて、濃いお納戸地に、浅黄と赤で、撫子と水の繻珍の帯腰、向う屈みに水瓶へ、花菫の
簪と、リボンの色が、蝶々の翼薄黄色に、ちらちらと先ず映って、矢車を挿込むと、五彩....
「江戸か東京か」より 著者:淡島寒月
川の御船蔵前とか、浅草の本願寺の地内とかいう所へ、小さい菰座を拡げて、珊瑚珠、銀
簪、銀煙管なんかを、一つ二つずつ置いて、羊羹色した紋付を羽織って、ちょっと容体ぶ....
「歌行灯」より 著者:泉鏡花
に重そうな、一本の舞扇。 晃然とあるのを押頂くよう、前髪を掛けて、扇をその、玉
簪のごとく額に当てたを、そのまま折目高にきりきりと、月の出汐の波の影、静に照々と....
「陽炎座」より 著者:泉鏡花
影が、半襟の縫の薄紅梅に白く映る。…… あれ見よ。この美しい女は、その膚、その
簪、その指環の玉も、とする端々|透通って色に出る、心の影がほのめくらしい。 「こ....
「薄紅梅」より 著者:泉鏡花
めて、黙りのまま、若い女房が、すぐ店へ出ると……文金の高島田、銀の平打、高彫の菊
簪。十九ばかりの品のあるお嬢さんが、しっとり寂しいほど、着痩せのした、縞お召に、....
「怨霊借用」より 著者:泉鏡花
の髪を解放し、あすあたりは髪結が来ようという櫛巻が、房りしながら、清らかな耳許に
簪の珊瑚が薄色に透通る。……男を知って二十四の、きじの雪が一層あくが抜けて色が白....
「亡び行く江戸趣味」より 著者:淡島寒月
、どんなに一生懸命であったかを実証している。 ◇ 昔はまた役者の
簪とか、紋印がしてある扇子や櫛などを身に飾って狂喜したものだ。で役者の方でも、狂....
「瓜の涙」より 著者:泉鏡花
萌黄に包まれた、土佐絵に似た峰である。 と、この一廓の、徽章とも言つべく、峰の
簪にも似て、あたかも紅玉を鏤めて陽炎の箔を置いた状に真紅に咲静まったのは、一株の....
「河伯令嬢」より 著者:泉鏡花
は蚕豆なるまで、品には、床の置もの、香炉、香合、釣香炉、手奩の類。黄金の無垢で、
簪の玉を彫んだのもある。地金は多くは銀だが、青銅も、朧銀も、烏金も……真黒な瓜も....